= エジプトを救った男 =
エジプトの王パロは夢を見た。
川から肥え太った七頭の雌牛と、
痩せた七頭の雌牛が川から上がってきた。
そして、
痩せた雌牛が肥えた七頭の雌牛を食いつくした。
ここでパロは目が覚めた。
彼はまた眠って、再び夢を見た。
一本の茎に太った良い七つの穂が出てきた。
その後、やせた七つの穂が出てきた。
そのやせた穂が、実った七つの穂をのみつくした。
ここでパロは目が覚めた。
パロはさまざまな人に夢の意味を尋ねたが分からなかった。
そのとき給仕役の長はヨセフのことを思い出し王に告げた。
それでヨセフは急いで地下の獄屋から引き出された。
ヨセフはパロに言った。
その夢は神がこれからしようとすることです。
エジプト全国に七年の大豊作があり、
その後七年のききんが起り、
そのききんは国を滅ぼすでしょう。
二度見られたのは、このことはかならず起こるということです。
そうしてヨセフはその具体的な対策について指示した。
それを聞いたパロはヨセフに言った。
「この国にあなたのようにさとく賢い者はない。
あなたはわたしの家を治めてください。
わたしの民はみなあなたの言葉に従うでしょう。
わたしはただ王の位でだけあなたにまさるのです」
パロは更にヨセフに言った。
「あなたはこの国のナンバー・ツーです」
そしてパロは指輪を手からはずして、ヨセフの手にはめ
亜麻布の衣服を着せ、
金の鎖をくびにかけ、
自分の第二の車に彼を乗せた。
パロはヨセフの名をザフナテ・パネアと呼び、
オンの祭司ポテペラの娘アセナテを妻として彼に与えた。
このとき、ヨセフは30歳になっていた。
ヨセフは、エジプト全国をあまねく巡り、指示を出した。
国民は彼に従った。
ききんの年の来る前にヨセフにふたりの子が生れ
長子の名をマナセと名づけた。
(神がわたしにすべての苦難と父の家のすべての事を忘れさせられた)
次の子の名をエフライムと名づけた。
(神がわたしを悩みの地で豊かにせられた)
そして、七年の豊作があり、
七年の飢饉が始まった。
飢饉が激しくなった時、
ヨセフはすべての穀倉を開いて、エジプトびとに売った。
それでも穀物倉は満たされていた。
それはヨセフが王の夢を解き明かし、そのとうりに行ったからだった。
パロのヨセフへの信頼はますます高まるばかりだった。
しかしヨセフの心はくもっていた。
あまりの飢饉の激しさに父のことが気になったのだった。
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