預言者がなくなると、
ハゾルで世を治めていたカナンの王ヤビンにイスラエルは苦しめられます。
イスラエルの不信仰のゆえです。
ヤビンの軍勢の長はハセロテ・ゴイムに住んでいたシセラでした。
彼は鉄の戦車900台を持っていて20年間イスラエルを苦しめていました。
そんな圧制の中、ラピドテの妻で女預言者デボラは
エフライムの山地、ラマとベテルの間にある棕櫚の木の下に坐っていました。
彼女は人の心を捕らえて奮い立たせる力があり、知恵深かったので
人々は彼女の助言に解決を得ようと遠くから集まってきていました。
デボラはある日、神さまのお告げをうけたので
ナフタリのケデシからアビノアムの子バラクを呼び寄せました。
「『ナフタリとゼブルンの両部族から一万人の勇士を選び
タボル山に陣をしけ、
シセラとその戦車と軍隊をキション川に引き寄せて
あなたの手にわたす』
神さまがそうおっしゃるのだよ」
バラクは驚きましたが彼女に言いました。
「わかりました。勇士を集めましょう。
でも、あなたが一緒に行ってくださらなければ
私は行きません」
デボラは苦笑した。
「神さまがあなたとともにおられるんですよ。
それなのにあなたは王の首を、女の手に渡すのですか。
それでも、いいのですか」
「かまいません。
あなたが行ってくださらなければ、私は行くことが出来ませんから」
デボラは杖を片手に立ち上がった。
その姿は逞しく確信に満ちていて美しかった。
バラクも歩き出していた。
鉄の戦車と戦おうという勇ましい男達一万人。
果たして集まるか不安だった。
彼にはまだ、神さまが自分を通して大きな事をなさるという実感に欠けていた。
・