ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

あれが王様?


ミヅパはごった返していた。
サムエルの声に応えて、イスラエル全土から集まってきた人々だ。
彼らの話題は、初代王様のことだった。

今日、それが知れるのだ。

広場に集められた群衆は、部族ごとに整列し、
氏族ごとにきちんとまとまっていた。

12部族の代表が次々とくじ引きしたが、当たりくじは出なかった。
人々の期待は一気にベニヤミン族の長に注がれ、そして、彼が引き当てた。
それからその中の氏族が集められ、
マテリの氏族が選ばれ、
今、キシがくじを引くために前に進み出た。

      (あれ?もう王様は決まってるでないの?
       あ〜、あれのこと。
          あれは内定ってことかしら。     
          部族全員が見守る中、くじ引きで、ってなったら
          公平に見えるしぃ・・・
          みんな納得するでないの。

          それに、内気な青年に
          こんなところで突然
          「あんたが王様!!」
          な〜んていわれちゃったら
          それだけで心臓止まっちゃうかも・・
 
          な〜るぅ・・それで、
          手の込んだことをしたってわけね

          はい、はい、次は、ひよこにも予言が出来てしまう〜〜

          あ!今まで「預言」の字間違えてたかも・・
          預言・・神様の言葉とかを伝える。(聖書で使ってる)
          予言・・未来を予測、将来を予測する。)
おお!!見ました?キシが引き抜いたくじ棒。
彼が高々とかざしたくじ棒には、真っ赤な印が見てとれます。

彼の顔は高揚し、そのくじ棒は震えています。
そうでしょうよ、自分の節くれだったその手が、
初代イスラエルの王を
つかんでしまったのだから。

    「キシの子サウル
     彼がイスラエル初代の王様だ」

群集がどよめき、その目が
その者のいるべき一点に注がれ、そして、宙をさまよった。。

     彼は?王様はどこだ?
群集は驚き戸惑い、
サムエルは言った

    「神様、その人はここに来ていますか?」

    「彼は荷物の間に隠れている」

人々の目が再び一方に注がれた。
サムエルの指示で荷物の山の中をあらためると
長身のサウルが血の気の失せた顔でうずくまっていた。

彼はずるずると引き出され、
それから観念したようにおずおずと、サムエルの前に立った。

緊張にこわばった顔だったが、
それが精悍そうに見え、誰よりも上背があり
力仕事で鍛え上げられた体はたくましくもりあがっていた。ので、
民はその美しさに息を呑み、
それから、どよめきのため息をついた。

おりしも雲間から太陽の光が一筋さっと差し込んで
この若者を浮き上がらせたときには感動もので
おもわず誰かが、

     「バンザ〜ィ!!」

我にかえった民も「ばんざ〜い」を連呼した。
     
間を見計らってサムエルは民を制し、それから、
かねて発表し、用意しておいた王制制度の決め事を民に読み聞かせ、
後々後悔することになるが、それでも良いのか、と、再び念を押した。
そんなサムエルの声を掻き消すかのように

      「我々には王が必要だ。
       サウル王様、ばんざ〜い」

民は叫び、ひとしきりそれが続いた。

集会は終わった。
興奮冷めやらずといった状態で、
土ぼこりにうっすらとかすんだ道を、ぞろぞろと家路に急ぐ人の中に
サウルも混じっていた。

彼の後ろには、彼の姿に陶酔し、
家来になりたいという若者たちが、ぞろぞろついて来ていた。

ギルガルでのサウルの生活は変わらなかった。
ついて来た者たちにも同じような仕事をさせた。

      「おい、これが王様の家来の仕事か?
       俺たちはいったいなんだ?」
      「当てが外れたが
       雨風しのげて食にありつけたんだ。
       しばらく辛抱するか」
      「あいつがイスラエルの王様だとよ。
       笑わせるぜ」

とか何とか・・・
一時の興奮が収まると、
サウルを慕ってきた彼らの目に見えてくるのは
何もかもしらっ茶けた景色と、愚鈍なサウルの姿でした。

彼らが、家臣としての礼を欠いていても
サウルはかまわず、
ただ点々と汗の染みを地面に落として、仕事をこなしていった。

そんな日常生活が回転し始めた矢先のこと
ヤベシ・ギレアデから
血走った目をギョロつかせた異様な男が
牛を使って仕事をしていたサウルの前にへたり込んだ。

     「誰か、水をもってこい!!」

サウルの声が突然響いた。