ヨナタンそっくりの息子メピボセテ*1に会え、親友との約束を何とか果たしたダビデは、心にゆとりが生まれました。
そんなおり、アンモン人ナハシ王の訃報が飛び込んできました。
ダビデは彼との交流を思い出し、息子ハヌンに慰めの言葉をかけようと使者を派遣しました。それから、新王の即位の祝福のためにも使者を送りました。
若い新王を取り囲むつかさたちは驚きました。
これはおかしい?なにかある?
つかさたちは戸惑い、疑った。それで彼らは若い王に言った。
「王様、ダビデがこのように使者を派遣してきましたが、そのまま鵜呑みにしてはなりません。あのダビデのこと、父君亡き後、この国をさぐり、隙あらば攻め込んでこようとの企みかもしれません」
最初、友好的だったハヌン王はそれを聞くと、使者を捕まえ、そのひげの半分をそり落とし、着ている物も腰から下を切り離してしまいました。そうして彼らを帰したのだから、たまらないのは彼らだ。恥ずかしくて王の前に報告にも行けやぁしない。
そんなことがダビデ王の耳に入ったので、王は彼らを憐れみ、ひげが生えそろえるまで、エルサレムの手前のエリコの町に、とどまるようにと伝えました。
使者のひげが伸びそろうと、彼らは早速ダビデの前に膝をかがめ、自分たちの受けた屈辱を語りました。その内容にダビデの体は怒りに震えました。
「お前たちへの屈辱は、この私への屈辱。かならず、仕返しをしてやろう」
ダビデは彼らに宣言しました。事の成り行きをじっと見守っていたハヌン王には、放ったスパイを通して逐一ダビデの行動が報告されていました。
ダビデはわれわれを憎んでいるぞ!!攻めてくるかもしれない。(あったり前でしょう。天下のダビデ王様の顔に泥を塗ったんですからね)
ハヌンは早速、3万3千人の兵士を雇い入れました。それを聞いたダビデは、ヨアブの率いる全軍を派遣。アンモン人は門の入り口でヨアブを待ち構えた。
よお〜し、束になってかかってこい。ヨアブは彼らを睨み付けた。彼が突撃の指揮棒を振ろうとしたとき、彼らの後ろで雄たけびが上がった。
「わぁぁ〜〜!!」
ハヌンはヨアブたちを挟み撃ちにすべく、彼らの後方に雇い入れたスリヤ人やマアカ王、それにトプ人を潜ませていたのでした。
チッ! はかられた!
ヨアブは一瞬ひるんだが、そんな様子は微塵も見せなかった。瞬時に兵士の中から選抜隊を組み、兄弟のアビシャイに残りの兵を託して言った。
「良く聞くんだ!!
われわれは今敵に挟み撃ちにされている。私は彼らとともに後方を守る。お前は城門に向かって突っ走れ!
もし、私が手こずっていたら援軍を頼む。お前の軍が助けを求めたら、かならず駆けつける。
イスラエルの民を守るため、神さまに選ばれた町を守るため、勇ましく戦うのだ!!主が共に居られるぞ!!」
ヨアブは大声で叫ぶと、選んだ兵を引き連れて
脱兎のごとく後方へと向かった。
死をもいとわぬヨアブと選抜隊。彼らがスリヤ人に立ち向かって一歩踏み出した時、その気迫に飲み込まれたのでしょうか。あら不思議?スリヤ人は我先にと逃げ出してしまいました。
「あ!あいつら何をやっているんだ!!」
遠くを見つめていたアンモン人の一人が叫びました。
それにつられた兵士の目が、遠くの成り行きを確認してビックリ。後ろから攻め上ってくるはずのスリヤ人たちが
尻尾を巻いて逃げ出していたからです。それを見て、彼らもあわてました。挟み撃ちだからこそ出来る作戦だったのに、これではめちゃくちゃです。
彼らは我先にと門のうちに駆け込み、かんぬきをかけてしまいました。
そんなわけで大した争いにはならず、彼らは深追いもせずに、ダビデのもとに帰ってきました。
しかし、スリヤ人はくやしくてたまりません。このままでは雇い主のハヌンに顔向けも出来ません。
それで体制を立て直し、イスラエルに太刀打ちするため、ユフラテ川の向こう側にいる仲間を集め、ヘラムに待機させました。指揮を任されたのはハダデゼルの軍長ショバクでした。
「なに、ハダデゼルの軍がへラムに集結した!よし! 今度はわしが指揮を執ろう。」
久々にダビデの戦魂に火がつきました。彼はイスラエル軍を引き連れると、スリヤ軍に体当たりです。
戦車の兵700人、騎兵40000人をたちまちのうちに倒し、隊長のショバクをも倒したので、ハダデゼルの家来であった王たちはダビデに降伏し、彼の元に仕えることになりました。
(ダビデ王様は凄いです〜!
でも、なにか・・・何だかわかりませんが、不吉な音が聞こえてきます。聞こえない。そうですか、ひよこの耳には不気味な重低音の波が・・・。わっ! 毛が逆立ってきましたぁ。。。。)
年が改まり、再び戦の季節になりました。
ダビデはじっくりと練り上げた作戦を、ヨアブに託すと、
彼はダビデの期待にこたえてアンモン人を滅ぼし、ラバを包囲しました。そこへダビデから使者が来て言いました。
「ヘテ人ウリヤを王の元につかわせ」
ヨアブは、はて?っと首をひねりましたが、
深く考えることも無く、彼をダビデ王の元に遣わしました。
果たして、ヘテ人ウリヤとは何者なのか?
*1:彼にはすでにミカという子供があり、彼の子孫は長く続きました。