アブサロム、死す!
この悲報はイスラエルの人たちにもいち早く伝えられた。
ユダ族の長老たちはあわてて、ダビデを王として再び迎え入れるべきだ派と、アブサロムに油を注いだではないか派に分かれて、けんけんがくがく。
ダビデはその機を逃さなかった。エルサレムに残留する祭司ザドクとアビヤタルに働きかけた。
「ダビデを王として迎えることに、他の部族に遅れをとな!」
そんなわけで、ユダ族の長老たちは隊を整えて、いち早くヨルダン川へ向かいました。その中に三人のサウル家の者たちも混じっていた。
ヂバ。サウル家の僕。メピボセテに仕えるも、欺く。彼は15人の子供と僕20人を連れて来た。
シメイ。ダビデ一行に付きまとい彼らを散々苦しめた。彼は、1000人のベニヤミン人と共にひれ伏していた。
アビシャイは彼を見て怒った。当然でしょう。油注がれたる者に向かってするべき行為にあらず。しかし、ダビデは強く彼の言葉を退けて、シメイの命を助けた。
あら、あれは誰かしら?もしゃもしゃの髭と、髪と、埃に汚れたぼろぼろの着物を着た人は?
メピボセテ。ダビデの親友だったヨナタンの子供。ダビデが都落ちをした後、ヂバに欺かれたと知ると、自分の身をかまわず、一心不乱にダビデの無事を祈っていた。
「あなたはなぜ私と行動を共にしなかったのか?」
ダビデはいくらかの批判をこめて彼に言った。
すでに彼の財産はすべて僕のヂバに与えているのだ。
ところがメピボセテの話を聞いて驚いた。足の不自由な彼をヂバが欺いていたのだから。しかしメピボセテは言った。
「どうか、私の処遇は王様の好きなようになさってください。私はサウル家の者、それはみんな死んだも同然です。それなのに私は、あなたのお慈悲により、あなたと同じ食卓でパンを食べています。これ以上、私はなにをあなたに訴えることがありましょう」
ダビデは以前の言葉を撤回し、ヂバと土地を分け合うようにと言い添えた。
「あなたがご無事に帰られたのです。私はあなたのそばに居られるだけで恵を十分受けています。彼にあたえたものはそのままにしてください」
ああなんて人でしょう・・・・
ひよこだったら・・・・・・・
ダビデは自分の過ちから派生した今回の事件に対し
何の怒りもわかなかった。
ただ、自分の至らなさを悔やむだけだった。
そうした中で、神様の許しと恵の体験が彼を人間的に成長させたのか、彼の心は深い慈愛の心に満ち溢れていた。
だから息子アブサロムに、自分の命を与えても良いと思ったし、次々と人を赦してゆくことに、何のわだかまりもなかった。
すでに彼は、大きな愛と許しの中に包まれていたから。
マハナイム滞在中、ダビデ一行を物心両面で支えたのは、ギレアデ人の富豪バルジライでした。彼もダビデと共にヨルダン川を渡ったのですが、彼はそれ以上歩を進めませんでした。すでに80歳と高齢なのです。
彼は息子キムハムを自分の代わりにダビデに差し出しました。ダビデは、彼の願いを聞き入れて、キムハムとその兄弟を厚遇することを約束して別れました。
こうしてギルガルに着いてから、盛大な歓迎を受けたのですが、ダビデ一行をヨルダン川まで迎えに行ったユダ族の人たちに向かって、出迎えに行かなかったイスラエルの半分の人たちから、厳しい批判の声が上がりました。
「私たちを差し置いて、なぜ王様を迎えに行ったのだ。我々にも王様を迎える権利があるではないか」
それに対してユダ族の人たちは言い返しました。
「ダビデ様はユダ族出身。当然ではないか。それともわしらが王様からひいきにされているとでも?わしらは何一つ、特別待遇を受けてはいない」
「王位復権を言い出したのは、われ等が先だった」
彼らは厳しく詰め寄りましたが、ダ族も激しく言い返しました。
・・・
小さな亀裂から、土手は崩壊するもの。ああ、また何か起こりそうな予感がします。ぴよ!