ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

主は牧者

ソロモンは屋上からエルサレムの町を眺めていた。
王宮のここは、父ダビデのお気に入りの場所であり
しばしば父と共に立った場所だ。
この場所から町を眺めることは
ダビデの習慣でもあったが、
すでに父はいない。

ダビデは無事に息子にバトンを手渡した安心感でか
一時無気力に陥ったが
まだ最後の務めのあることに気付いて
ある日突然起き上がった。

顔の色艶もよくなり、食欲も増した。
閉ざされていた厚いカーテンも開けられた。
それだけで王宮全体が明るくなり、活気が溢れた。

昼間のダビデ
ソロモンの仕事ぶりを眺め、
満足そうにうなづき、

夜になると彼を寝室に招き、
王としての心構えや
自分が残した仕事のあれこれを指図した。

わし亡き後、必ず不穏分子が動き出す。
よいか、事が起こったら臆するな。
若くて戦知らずの軟弱な王と
噂している家臣や民の前で
その風評を毅然とした態度で粉砕するのだ。

よいか、神殿を建てよ。
神様は戦で汚れたわしの手を拒まれたが、
「平和の子」であるお前には許可をくだされた。

それからのダビデ
イスラエルの神様のこと
天地創造の唯一の神様。
イスラエルの民は神様の一方的な愛によって選ばれた民〔*1〕であること。

神様とイスラエルの関係
(契約によって結ばれている。守れば祝福、破ればそれ相応の・・)
そして、家系について語り続けた。アブラハム、イサク、ヤコブ・・ダビデ、ソロモン・・・)

それは汲めども尽きぬ泉のように
ダビデの口から溢れた。

そんな時のダビデの声は若返り、
深い皺の奥に沈んでいた瞳はキラキラと燃え出すのだった。
ソロモンはそれらの言葉を一言も漏らすまいと
身を乗り出して聞き入った。

「主はわたしの牧者であって、
わたしには乏しいことがない。
主はわたしを緑の牧場に伏させ、
いこいのみぎわに伴われる。
主はわたしの魂をいきかえらせ、
み名のためにわたしを正しい道に導かれる。
たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、
わざわいを恐れません。
あなたがわたしと共にもにおられるからです。
あなたのむちと、
あなたのつえはわたしを慰めます。
あなたはわたしの敵の前で、
わたしの前に宴を設け、
わたしのこうべに油をそそがれる。
わたしの杯はあふれます。
わたしの生きているかぎりは
必ず恵といつくしみとが伴うでしょう。
わたしはとこしえに主の宮に住むでしょう。」
詩篇23篇)


父が残した美しい歌だ。
ソロモンは声に出して歌った。

風が出てきた。

ダビデのその生涯は戦の連続だった。
ヘブロンで7年、エルサレムで33年、
王としてその地位を守り、
息子ソロモンに後を託し、
70歳で世を去った。

風がソロモンの衣の裾をひるがえした。
彼は気にすることなく佇みながら
中天にある日の光に包まれていた。

そうしていると、
父から譲り受けた多くの宝がその出番を待って
キラキラと輝くさまが
脳裏にはっきりと現れるのた。

ソロモンは振り向いた。
微かに母バテシバの声を聞いたような気がしたのだ。


*1:選民・新約の時代になるとその意味は広がる