ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

40万と80万で

う!! 

アビヤ*1は言葉を失ってゼマライム山頂で、吹き上げてくる強風の中に立ち尽くした。

風が運んでくるのは敵のざわめきで、それは足元からぞろぞろと這い上がって来て、彼の体は全身鳥肌が立っていた。
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父の代から今まで、北イスラエルとの小競り合いは続いていたが、イナゴの大群のように押し寄せて来たことはなかった。それが王位を引き継いで三年目、彼の眼下には、今まで見たこともないような光景が広がっていた。

対峙する山肌は敵兵で覆われ、地肌が変わって見えた。

数は?! 敵兵の数は!
 
80万かと・・

我らは?

40万です。

少ない! 半分ではないか!
   
イスラエルがそろえた兵は、大勇士と呼ばれる特別な部隊だった。後ずさる彼の背を、見えない何かが押しました。すると、アビヤの腹の底から声が湧き上がってきて、彼の意思を越えた度し難い力で、それは唇を突き破って出た。

ヤラベアムよ! よく聞くが良い。
お前たちは「塩の契約*2」を忘れたのか!
イスラエルの国はダビデの子孫が受け継ぐものぞ。
ダビデの子、ソロモンの家来だったヤラベアムよ、
お前はどこの骨ともわからぬ輩を集めて、神が定めた王に背いたのだ。
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お前たちが拝んでいる金の子牛は偶像だ!
若い雄牛一頭と、雄羊7頭で、職を得たならず者は、主が定めたレビ人と祭司を追い出し、聖務を行うなぞ言語道断!
我々は神様の教えに則り、神様が選ばれたレビ人と祭司が、お勤めをきっちりとしているのだ。
我々は真の神様によりすがる。


アビヤは日ごろの不信仰を棚に上げて大声で呼ばわった。

ヤラベアムよ、聞こえるか!
わが父レハブアムはあの時兵を出さなかったが、彼は、若くて意思が弱かった。だが、私はちがう。

見よ!!ダビデの神が共におられるぞ。真の神こそ我らの頭だ。ラッパを吹き鳴らせ!

アビヤは右の手を高々と上げながら叫んだ。
するとにわか造りの祭壇の、一段高い所から祭司たちは一斉にラッパを吹き鳴らした。

ヤラベアムは笑った。

何をほざくか、若造め!
その人数では勝ち目はないぞぉ〜。
一寸の虫にも五分の魂かぁ?
いい度胸だ。
意地と根性を見せたつもりだろうが、
お前が見るのはこれだ!!
後ろだ!!   
 
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ユダの兵はぎょっとして首を捻ると、そこにはヤラベアムの伏兵が詰め掛けていた。

絶体絶命!!
アビヤの体は凍りついた。
その時彼の心は、一瞬ストーンと納まるべきところに納まった。一点の曇りもないその心に神様は応えられた。

祭司は必死でラッパを吹き、兵はノドが切れるほどに声を張り上げ「窮鼠猫を噛む」の思いで、山を駆け下り、うねり来る敵兵の中に飛び込んでいった。

この地上で死ねば生き返ることは無いのだ。死に物狂いで剣を振り回し、棒を突き出し、愛する人の元に必ず帰ると念じながら。

気付けば辺りは静けさを取り戻していた。
累々と散らばる屍の中に、返り血を浴びた兵士が、どす黒く濁った血の海に半ば酔ったように揺れながら、定まらない眼差しで佇んでいた。
横たわる者、約50万人。

この奇跡的な勝利は彼らがその先祖の神、主に頼ったからでした。
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この時ユダは、勢いに任せて北進し、べテルとエシャナと、エフロンの町々を取った。

これでユダの人々は真の神様に立ち返ったかとゆうと、そんなこともなく、喉元過ぎればなんとかで・・の譬よろしく、性懲りもなく元の生活へと戻っていったのでした。

アビヤは、妻14人をめとり、息子22人、娘16人をもうけた。
そして、大勝利が自分の手柄であるかのように錯覚して、
ますます高慢になってゆきました。

アビヤの行為は預言者イドの「ユダ史」に記録されました。

*1:歴代誌下13章ではアビヤ、列王記上15章ではアビヤム

*2:アロンとその子孫に約束された聖務と報酬など。レビ人と祭司についての神様の約束