ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

イスラエルの戦車よ! その騎兵よ!

川を渡りきって
背後に目をやったエリシャはギョッとした。
ヨルダン川が、何食わぬ顔して、静かに流れていたのだ。

彼は、足元に水が迫って来はせぬかと、
慌てて後ずさった。
そして、
そのまま気ぜわしくエリヤの姿を探して、
走った。

  何を慌てているのだ。
  今までも、これからも、お前の歩む後には
  神様の不思議が記念として残るだろうよ。
  前を向き、神様から目をそらすなよ。

風が強くなってきたような気がした。
エリヤの髪が揺れている。
エリヤは辺りを見回し、
それから、
おもむろにジッと愛弟子に目を注いだ。。

  お前が、私に望む最後の望みは、何だね?

エリシャは、はっとして、それから胸が熱くなって、
目頭が痛み、鼻の奥がツンと音を立てた。
しかし彼はそれに気づかなかった。
ただ、上ずった声が乾いた唇を切り裂くように飛び出した。

   あなたの霊の二つ分を、わたしに継がせてください。
    
      ひぇ〜〜!欲張りエリシャさん! いぃ〜え、謙遜なエリシャさん?
      いえいえ、ただ彼は、良い後継者にならせてくださいと・・
      そうなのぉ、ひよこだったらぁ、、
      ええ〜っと、あれに、これにぃ〜、それに、それからぁ〜・・・・
      はい、時間切れ。
      流れ星に願い事を・・あれって、もしかして、ここから?
                てっことはありませんね。

エリヤは慈愛に満ちた眼差しで彼を包み込みながら、、
満足そうに、優しく微笑んだ。

   わたしが取り去られる様子を
   捉えることが出来るならば、
   願いは叶えられるぞ。
   一瞬だ。目を離すな。

   は、はい。

目玉が飛び出すかと思うほどに見開いた目を、エリヤに向けながら、
エリシャはゴクリと生唾を飲み込んだ。

エリヤは愛弟子に言い残したことは無かっただろうかと、
あれこれ思い巡らし、
老婆心に駆られて弟子に話しかけながら、
導きのままに足を進ませた。

すると突然、
ぽっかり視界が開け、深い谷が二人の前に広がった。
涼やかな風が谷底から這い上がってきて、
二人の衣の裾をゆるゆると揺らした、と思う間もなく、

激しい上昇気流に運ばれた雲霧が、あたりに広がり、
風が激しくなって、二人の会話を遮った。

   エリヤ様!!

エリシャは師の腕を捉えようと手を伸ばした、が、
指先に触れたのは、エリヤの外套で、
彼はそれを、ガシッと掴んだ。

鋭く光る目。
真っ赤な目だ。
馬だ!
それが一瞬、エリシャを射るようにとらえ、
たてがみをめらめらと燃やした。
馬の引く戦車も炎を上げていて、
エリヤの姿がその中にあった。

   わたしにあなたの二倍の力を!!
   
エリシャは、師の姿を見失うまいと
炎の向こうのエリヤの姿を目で追い続けた。

轟音が起こり、炎が渦巻き、
火の粉を撒き散らし、
燃える竜巻の先に押し上げられた火の車は
こうしてエリシャの眼前から、
ぽっかりと口を開けた天空へと姿を消した。

ガクガク体が震えるエリシャ。
残された外套を胸に抱えて突っ伏すと

   わが父よ、わが父よ!
   イスラエルの戦車よ!
   その騎兵よ!

と叫ばずにはいられなかった。
その閉ざされた瞼の奥に、
真っ赤な炎は燃えていて、
くっきりと浮かび上がるように刻まれているのは
師エリヤの姿だった。

   ピィィィーリリりりィ

エリシャの頭上で鋭く鳥が鳴いた。
それから、頭が痛くなるほどの静寂。

うずくまるエリシャの影が、音も無く動いていった。
彼もまたそれに引きずられるようにして
ゆるゆると体を起こし、
あたりをまぶしそうに見回した。

新生エリシャ! 
その働きやいかに・・・・。