ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

一緒でなければ

ハクチョ〜〜ン!!

部屋の中に可愛いくしゃみが七回も続いて、子供がベットの上で目を開けた。エリシャは部屋のドアを開けてゲハジに言った。

母親を呼んできなさい。!!

ゲハジが階段を駆け降りた。
入れ替わるように母親が、裾を足に絡めながら駆け上ってきた。
そして開かれた入り口で一瞬、足を止めた。

薄暗い部屋の、あのベットの上に横たわっている子供と
目が合っった。

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 あぁぁぁ〜〜!

彼女は両手で空を引き裂くような勢いで突き進んで、へなへなとベットの脇にひざまずいた。握り締めた息子の手は暖かく、子供の顔がかすんで見えなかった。

ママ! 

戸惑いを含んだ声で、子供は言った。。

ママ!どうしたの?泣かないで。

息子の可愛い右手がさし伸ばされて、埃に汚れた母親の頬に触れ、流れ落ちる涙を拭って、心配そうに覗き込んだ。

さあ、抱き上げてあげなさい。

エリシャが優しく言った。

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彼女は身を起こし、ベットの脇に座ると、息子をひざの上に抱きかかえ、ゆりゆりと体をゆすりながら、その柔らかな頬に顔を押し付けた。

この涙はね、あなたが元気になったからよ。

彼女の頬にまた新たな涙が流れた。
   
僕、お父さんの畑に行ったんだよね。そしたらさ、頭が急に痛くなったんだ。

大変だったねぇ。あんまりあなたが痛がったので、すぐにお父様が、家に連れ帰るように僕に言ってくれたのよ。あなたが家に帰ってきた時には・・

彼女は言葉を止めた。

僕は、家に帰ってきて、お母さんの顔を見たところまでは覚えているんだ。だけど、その後は・・

そうね、その後はね、
ママがこの部屋まで、あなたを運んできたのよ。だって、あなたの体が、だんだん冷たくなってきちゃったんだもの。
それで、ママはエリシャ様のことを思い出したの。
あなたの病気を治せるのは、あの方しか居られないってね。

あの時、彼女は自分の腕の中で息を引取った息子の、その命を取り戻そうと、大声で息子の名を呼んだ。
まだ幼いその体を揺り動かした。閉じられた瞼。力なく開いた唇の隙間から、何か話しかけるかのように健康的な前歯が見えた。
しかし、意識は戻らなかった。

彼女はエリシャの部屋に息子を運び、このベットに寝かせたのだった。

そうして、あたかも息子が寝ているかのよう横たえると、そっと部屋を出て、ゆっくりとドアを閉めた。

夫はすでに帰宅していた。

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あなた、私にロバ一頭と、しもべを貸して下さい。エリシャ様の所へ行ってまいります。

どうした?あの子の具合はそんなに悪いのか?この時刻だ。私が行こう。

いえ、私が産んだ子です。
私に行かせてください。

妻のただならぬ雰囲気にのまれた夫は、僕に旅の支度をさせ、妻を送り出した。

ひぇ〜〜!どうなってんのぉ?
息子が亡くなったってこと、旦那様に言ってないよ!気が動転してんだね。
旦那様もこの異常事態にすぐ気づいたはず。旦那様は知らないはずないものね。

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夫婦仲、大丈夫だろうねぇ??
フムフムフム・・っと、
野次馬根性で色々と想像してしまうぅ
何にしてもです、旦那様の影が薄すぎぃ!がんばれ!旦那様!!

はははぁ、なんちゃってね。
ここでは二人とも仲良しで〜す。信頼しあい、尊敬しあっていま〜す。短所を長所に変える魔法の目を持っていて、労わりあい、優しい言葉かけも出来る、成熟したご夫婦ってことで。

だからこそ、旦那様の心配がわかるわぁ。
だって、カルメル山とシュネムの距離よね。 
聖書の付録の地図で見ると、直線で60km以上あるみたい。
最近は、エルサレムからカルメル山まで日帰りバス観光ができるそうです。
シュネムはそのちょうど中間くらい。
バスがそのころあれば、すぐ行って、帰ってこれるでしょうが・・・。

昔の日本人は健脚で、
32〜40kmを約8〜10時間で歩いて行ったとか。

彼女は、彼女はですよ、ロバに乗って行ったんですよね。

「全速力で行って。歩調を緩めないで!」

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気ばかりがあせっていたのではないかしら?
それに山伝いに行ったのか?いったん海沿いに出て、海岸伝いにいったのか?

とにかく日帰りなんて出来っこないよね!!
だからこそ、エリシャさんたちを泊めたわけでしょうからね。

ただただ、子供を助けたい。母親としての一心が、髪振り乱して、行っちゃったわけだ。
でね、エリシャさんが気づいて、

おや、どうしたのだ、シュネムの女主人がやってくるぞ、ゲハジ、急いで出迎えに行ってきなさい。
てなわけですね。

奥様お元気ですか?ご家族の皆様にお変わりありませんか?

まあ、お出迎え、ありがとうございます。
はい、私も夫も子供も元気です。でも、急用ができまして、エリシャ様にお取次ぎを願います。

彼女は、例の笑顔で微笑んだものの、すぐに険しい顔になったのを見て、ゲハジもただならぬものを感じ、口をつぐんだ。

彼女はエリシャの姿を認めると、急に走り出し、ひれ伏して、彼の足元にすがりつき、泣き出した。

あっ! ああ〜っ! な、なんてことを!これ!やめなさい!!先生、済みません。

ゲハジは慌てて駆け寄って、
女主人をエリシャから引き離そうと手を伸ばすと、エリシャは静かに言った。

このままでかまわない。彼女の感情が静まるまで待つのだ。神様は彼女の苦しみを、まだ私にお告げにならないから。

ひとしきり涙を流した彼女は、自分の状態に気づいて、慌てて身を引いた。そうして乱れた服をもどかしく整えながら言った。

エリシャ様、あなた様が私に子供が与えられるとおっしゃられた時、私は、「おからかいにならないで」と申したはずです。
ですのに・・・

女の目から再び涙が溢れてきて、言葉が途切れた。

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ゲハジ!!
この私の杖を持って急いでシュネムに行きなさい。
幼子の上にこの杖を置いて祈るのだ。途中で知り合いにあっても挨拶をするな。

ほ、凄い!
彼女の言葉で、わかっちゃいました。エリシャ様ってやっぱり凄い!!

ゲハジは慌てて、エリシャから杖を受け取ると、あわただしくシュネムに向いました。その後姿がまだ消えないうちに女は言った。

エリシャ様!!あなたが一緒でなければ、私は家には帰りません!

女の決心が固いことを知ったエリシャは、旅支度をはじめた。二人が道半ばまで来たとき、ゲハジが青い顔をしながら帰ってくるのに出くわした。

だめです!子供はピクリともしません。

その言葉に、女は慌てなかった。ただジッとエリシャを見つめ、エリシャはまっすぐ目をシュネムに向けて、再び歩き出した。

エリシャは、シュネムの子供が横たわる部屋に一人で入り、戸を閉じて、主に祈った。
そして、子供の上に覆いかぶさった。
しばらくすると、小さな体に温かみが戻ってきた。
エリシャは起き上がり、部屋の中をゆっくりと歩き回りながら祈った。そして再び子供の上に身を横たえた時だった。

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「クッチュン!!」 

エリシャはニコリと笑って、立ち上がった。
すると、子供は続けざまに七回もくしゃみをして、不思議そうにエリシャの顔を見上げたのだった。

これって、夜中も走り回ったってことかな?エリシャさんには息子を助けることが出来ると分かっていたので、危険な夜旅を避けたのか?どちらかな?

ゲハジは自分の力のない信仰のゆえに、頭を下げるしかありませんでした。そして、心、新たに入れ替えて、エリシャに従い学ぶ決心をしたのでした。

でもね、彼、エリシャさんの顔に泥を塗って、とんでもないことになっちゃうのです。それは後ほど。