ヒルキヤの子宮内卿エリアキムと書記官セブナ、それにアサフの子の史官ヨアは、ラブシャケの品のある顔立ちと物腰、それに流暢なへブル語に驚いた。
もしかしたら、捕囚として連れて行かれたイスラエル出身の貴族の血を引く者かも・・
三人はそんな思いと、戸惑いをこめて互いの顔を見やった。
ラブシャケは三人の心のうちを知る由もなく
彼らにむかって言い放った。
ヒゼキヤに伝えるのだ!!
大王、アッシリアの王は言われる。
お前は私を裏切って、川面に映えるアシを頼った。エジプトはお前を助けない!それとも、イスラエルの神に助けを求めるのか?
その神が私に言われたのだ。ユダに攻め上り滅ぼせと!
その声は声量があって、彼らの後ろで耳をそばだてている、民の所にまで届いてゆきそうだった。エリヤキムは声を落として言った。
私たちは、アラム語が分かります。
どうか、アラム語でお話ください。後ろに控える民には、聞かせたくない内容ですので。
ラブシャケはニヤリと笑った。
ははは!
その民にも聞こえるように話しているのだ!
そのために私が遣わされたのだ!
ラブシャケは立ち上がった。そして民に向かって両手を広げ、さらに声を張り上げて語りだした。
ユダの民よ、
大王、アッシリアの王の言葉を聞け!!
民よ! ヒゼキヤの言葉に騙されるな!
我がアッシリアに勝てるわけがない。
悪あがきはやめるのだ!!
大王は言われる!
お前たちに約束しよう。
お前たちの命は守られる。
私が、お前たちに新しい土地を用意しよう。
そこはここよりも素晴らしい所だ。
それでもなお、神がお前たちを守ると言い張るのか!
今まで、我が大王の手から、自分の国を救い出した神々は居なかったぞ!
ラブシャケの声は、はっきりと民の耳元まで届いた。しかし、それを耳にした民は無反応だった。
ヒゼキヤ王の命令で、彼の言葉に答えてはならないと言われていた。
ヒゼキヤ王の宗教改革が功をなして、イスラエルの神により頼む信仰が行き渡っていたからでもありました。
だからといって、民の心が揺り動かされなかったといったら嘘でしょう。それは王ヒゼキヤも同じでした。
ラブシャケの言葉と、アッスリアの王の親書が届けられると、ヒルキヤはそれにすぐ目を通した。読み進むうちに王の顔色は変わり、その手が小刻みに震えだした。。
引き裂いた衣の上に、使者が持ち帰った親書が転がり落ちた。
王は荒布に着替えると、交渉役の三人と、年長者の祭司に荒布をまとわせ、預言者イザヤの所に走らせた。
イザヤの「祈りの支え」が必要だと思ったのだ。彼らがイザヤの元を訪れて、王の言葉を伝えようとすると、イザヤはそれを制して言った。
王様にお伝えください。
主の言葉です。
アッスリヤの言葉に恐れるな!
こう言ってからイザヤは神様のご計画を彼らに伝えた。
えっ!
本当ですか?!
イザヤの言葉を聞いた彼らの目は、喜色にあふれて輝いた。
いったい神様のご計画とは何なのでしょうね?ピョ!