ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

今、そのことのために命を賭して・・・・

   まぁぁ!!

王妃エステルの身の回りの世話をする侍女たちは、
ため息をついて顔を見合わせた。

今日、王妃の身支度にはいつもより時間をかけた。
王妃はこの日のために身を清め、
三日間の断食をした後だった。
そしてさらに身を清めて、

真新しい王妃の衣装をまとった。
衰えを知らない肌の輝き。
澄んだ瞳。
侍女はその輝きと柔肌をそこなうことの無いように、
うっすらと頬紅ちらし、微笑を絶やさないその唇に、
そっと紅をのせた。

   完璧だわ!心の中で叫びなら、
   侍女は自分の作品を愛で、
   潤んだ眼差しが王妃の姿をぼかした。

 

エステルは立ち上がった。

そして、王宮の内庭に入った。
胸が高鳴って足が震えた。
王の召しがないままに王の内庭に入ってゆく者は、
必ず殺されると聞かされていた。
侍女が衣の裾を整えて、後ずさって退くと、
王の広間に向かうそこには、エステルだけが残された。
頭をたれ、目を閉じて膝を折った。

王妃となってすでに5年の歳月が過ぎていた。


彼女はかって首都スサで、おじのモルデカイとつつましく暮らしていた。
ペルシャの地にきたのは、ユダがペルシャのネブカデネザル王に負けたからで、
ユダの王エコニヤを含む捕囚民としてバビロンに連行されてきたのだった。
彼女も両親も、おじモルデカイも共にその中にいたのだ。
なれない地での過酷な労働の末に両親は亡くなり、
モルデカイは幼いエステルを引き取って育てていた。
エステルの存在は、モルデカイの生きがい、
生きる支えだった。
美しく成長した娘の幸せをいつも祈っていた。

   しあわせ?・・
   こんな捕囚の民に幸せなんてあるのだろうか?
心が曇るそんな日の、昼下がり、

町のかどに、王のお触れがきがたった。
美しい乙女を首都スサに集め、
新しい王妃選びが成されるとゆうのだ。

 

  え!!

 エステルは膝の上のエプロンの端を握り締め、

それからぶるっと体を震わせ、

いやいやと首を振ってうなだれた。
エプロンの上で、力を抜いた手のひらの先の、
荒れた指先が悲しかった。

   無理強いはしないさ。
   だがな、
   お前が選ばれて王妃にでもなれば、
   囚われの身の我らにとっては希望の光りとなる。
   よく考えてみてくれ。

   それは、捕囚の民の娘でもよいとゆうことですか?

   いや、

   そのことは、時が来るまで伏せておくのだ。

一瞬、辺りをうかがうように目線を動かし、、
よいなっと、彼は眼力で念を押した。

 

 

あれから、
彼女はたくさんの美しい娘たちの中にあった。

その中にいると、何のとりえも無い自分を感じた。
取り巻く娘たちの輝きに飲まれてめまいがした。

   神様、

   このような私が捕囚の民の

   喜びの光りとなれるのでしょうか?
   おじ様は孤児となった私を引き取って、
   今日まで慈しんで育ててくださった。
   その恩に報いるためなら、
   こんな形で、おじ様が喜んでくださるなら、
   私もまた喜びます。
   神様どうか私を哀れんでください。

 

心の中で祈るエステルは、ツッと雲ひとつ無い空に

澄んだ瞳を向けた。 

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   おっ!

ヘガイの足が止まった。
集められた娘たちの世話を任せられている男だ。
彼は一瞬目をこすった。
彼の眼差しの先にはエステルがいた。
そこだけが、

明るい光りに包まれているかのように見えた。
   あの娘は・・・?
彼はしばらくエステルの上に目を注ぎ、
その立ち振る舞いを見てから、
   よし!

と手のひらをこぶしで叩いて、

足早に立ち去った。

こまごまとした仕事が山済みだった。


集まった娘たちには、それぞれの部屋があてがわれた。
エステルのつれて行かれた部屋は、その中でも最高の部屋だった。
それに、ヘガイが選んだ七人の優秀な侍女が、彼女の世話をした。
食事も化粧品も衣装も、
すべてヘガイが、彼女のために特別にしつらえたものだ。
毎日毎日が夢のように過ぎて行った。
モルデカイはそわそわと落ち着き無く、
何気ない風をよそおっては、エステルの部屋の前の庭を横切った。
そんな日々が重なって一年が過ぎた。

そうして並み居る美しい娘たちの中から
王はエステルを選んだのだった。

 

王には美しい后がいた。
アハシュエロス王、在位三年目のことだ。
ギリシャ攻撃の前祝で、170州の代表者が一同に会し、

宴会がもようされた。
   180日?! 本当かしら? ピョ!

その後続いて、、
宮殿で働く人たちのため、身分の上下を問わず招いて、
慰労会を開いた。
無礼講だったので、宴席は盛り上がり、
王もリラックスして言った。

   よし!
   わしの自慢の王妃を拝ませてあげよう!

   わぁぁぁ!!

期待に膨らんだ宴席の男たちは吼えた!
王はしっかりと手続きを踏んで、
(彼はきっかりさせなければ気がすまない性格だったみたい)
王妃に宴会の席に来るようにと命じたのでした。
その時、王妃も別室でパーテーを開いていたし、
無礼講の宴会の様子も聞かされていたので、
   カッキン!!

と頭にきて言いました。

   そのような席で、

   王妃の私を見世物になさるとは・・・

プライドを傷つけられた王妃は、
それを拒否したからたまりません。
部下の面前で赤っ恥を掻かされたのは王で、
盛り上がっていた宴会は、一瞬にしてなえて、
ただ王の怒りの炎だけがめらめらと燃え続けました。

   一体どうしたらよいのだ!

王はお抱えの七人の法律専門家に尋ねました。

   王様このままでは国の乱れとなりましょう。
   国を治めるのはあなた様、
   家を治めるのは家長です。
   王妃様の行動は、家の妻たちを増長させるだけ。
   王様がお許しになられるならば、
   ワシテ様を王妃の座からおろされることです。
   それを国中に知らしめれば、

   あなた様の名誉は保たれ、
   妻たちも夫を敬うことでしょう。

こうして、王はギリシャ戦に望んだのでしたが、
ギリシャは思いのほか粘り、
アハシュエロス王はやむなく引き返してくるほかはありませんでした。

気弱になった王は、王妃ワシテを退けたことを後悔しました。
むっつりと塞ぎこむ王を見かねて側近が言いました。

   新しく王妃をお迎えになさっては?

そして事はとんとんと進んで、
エステルが選ばれたのでした。
王の寵愛は限りなく注がれ続けていた。

あれから五年。
今、命を賭して、ここ立っている。

同胞の危機が迫っていたのだ。
モデルカイは言った。

    王宮にいるからといって、

   自分の身が安全だと思うな。
   王妃となったのは、

   このような時のためかもしれない!

 エステルの体は強張っていた。

時が止まったのだろうか?

自分の息遣いだけが静寂の中で響きわったっているようで、

恐ろしかった。

それでも、クッと、下唇をかんで、

かすかな音をも逃すまいと耳をそばだてた。