ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

どうぞお二人でいらしてくださいませ

王妃エステルが身をかがめている王宮の内庭の先には、

王の謁見の間があった。

王は玉座に座してふと見ると、
王妃エステルが内庭に入っているのがわかった。
    はて?
王は不審に思いながらも、手にした金の笏を急いで延ばした。
王が笏を差し伸ばさなければ、
たとえ王妃といえども捕らえられ、

首を落とされてしまうからでした。
そういえば忙しさにかまけて、

王妃とはもう一ヶ月も顔を合わせていなかったな。
突然愛おしさがこみ上げてきて、
王の眼差しは和らいだ。

    王妃よ。
    何か願い事でもあるのか?
    お前が願うならば、
    この国の半分でも喜んでくれてやろう。

エステルはさらに深く身をかがめて言った。

    王様、あなた様の慈悲深いお言葉に感謝いたします。
    あなた様のお心にかないますならば、
    今宵、王様のお慈悲に感謝して宴をもうけましょう。
    どうか総理大臣のハマン様とご一緒にお越しくださいませ。

 

口中には先ほど手にしたワインの香りで溢れていた。

緩やかに解きほぐされてゆく四肢の開放感。
心地よいエステルの言葉。
衣擦れの心地よさ。
いこごちのよさにふと時を忘れるほどだった。

    さて、最上のワインでもてなしてくれた王妃に
    わしは何をしたらよいのかな?
    昼間言った言葉は本当だぞ。
    お前さえ望むなら喜んでくれてやるぞ。

エステルはその言葉に勇気を奮い立たせていった。

    有難うございます。
    あなた様のご好意に甘えてお願いがございます。
    どうか、明日の夜もハマン様とご一緒に、
    私の宴にいらしてくださいませ。

    

    ははは、たやすいことだ。

 

王は、心地よく笑いながら席を立った。
そのすぐ後を、緊張気味な足取りでハマンが続いた。
エステルはその後姿が見えなくなるまで、
そして、見えなくなった後もじっとたたずんでいた。

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ハマンが総理大臣となり王の信任を得ると、
かれは言葉巧みに王にとりいって、


    王の家臣はハマンに出合った時、

    敬意を払って頭を下げること

 

王の信任をいいことに、そんな規則を作らせたのでした。
しかしモルデカイは、

自分はユダヤ人だからと、それを無視し続けた。

それに怒ったハマンは彼の命を奪おうと頭をひねりました。

 

      そうだ、あいつだけでは物足りない。

      ユダヤ人だ。奴の仲間もこの際・・

 

計画実行日はサイコロを転がして決めました。

     来年の2月。

采の目が出ました。

   王様、この国にはあなたを敬わない民が

   根を下ろしているのをご存知でしょうか。
   彼らの法律は変わっていまして、

   それゆえ、あなた様の命令にさえ逆らっております。
   彼らをこのまま野放しにしておくことは、

   あなた様にとってもよい事ではありません。

   どうか私に、彼らを始末する権限を与えてください。
   そのための必要経費として

   私の資産から60億円を納めさせていただきます。

王様はハマンの熱心に動かされて、

指輪をはずしてハマンに渡しました。

   金の心配はするな。
   お前のやりたいようにするがよい。

王の認可を得ると、ハマンは早速行動を起しました。
州ごとにその土地の言葉に従って、

彼が王様に勧めた命令を伝えました。

 

   ユダヤ人の老若男女を問わず、皆殺しにせよ。
   実行日は来年の2月27日から。
   彼らの財産は、手を下した者の報酬とする。

 

モルデカイが灰をかぶって叫んだのはこの事のためでした。
そして王妃エステルが、意を決して王の内庭に足を踏み入れたのも
そのことのためでした。
彼女は祈りつつ、慎重に行動しました。

ハマンはそんな王妃エステルの心のうちも知らず、
ただ王様と共に王妃の宴に招かれた光栄に

酔いしれていました。

しかしそんな高ぶりも、門のそばに立つモルデカイの姿が

目に飛び込んでくるだけで削がれました。


    気にするな!あの顔ももう見納めだ。

彼は自分の心に言い聞かせた。

    来年になったら、後悔する事になるだろうよ。

ハマンは胸のうちであざ笑いながら帰宅しました。

彼は自分の取り巻きや妻を相手に、
自慢話をするのが好きでした。

    若くして異例の昇進を果たし、
    子宝にも恵まれ、
    資産もあり、
    王に次ぐ権力者として人々に敬われている等々・

 

そして二日続けて、

王様と二人だけで王妃の宴に招かれ、
明日また招かれているのだと話して、

彼の顔がゆがんで言葉が途切れました。
目の前に、モルデカイの顔が浮かんだからでした。

   どうなさいまして?

妻が声をかけると彼は苦いものを吐き出すようにして、
事の次第を告げました。

    なるほど、
    どうでしょう、

    その憎らしいモルデカイをつるしてやっては。
    そうですよ、

    25メートルくらいの高い絞首台を作って、
    みんなの見せしめにしてやりましょう。

取り巻きたちと、わいわい騒いでいるうちに、

ハマンの心も晴れ、
朝一番に王様に願い出ようと決めると心が落ち着き、

睡魔が急に襲ってきて、

彼は深い眠りにおちて行った。

そんなわけで、彼の朝の目覚めは爽やかだった。