ビルダデはイラついていた。(# ゚Д゚)
「神は不公平だ」とヨブが口にしたからだ。
いつまでグダグダ言っているんだ!
お前に非がなくても息子たちはどうだ。
お前が彼らのすべてを逐一見張っていたのか?
とにかくだ、神様に許しを請うのだ。
昔の人の知恵によれば、神を忘れる者は滅びるとあるぞ。
神様は善人を見捨てられないし、正義を曲げられない。
神様の前にへりくだった者、清いとされた者は、
滅びの谷、悲しみの泉から救い出されるのだ。
お前だって、
再び息子たちに恵まれ、笑いで満たされるぞ。
エリファズは自分の霊的体験についてヨブを説き伏せようとし、
ビルダデは古くからの知恵の言葉でヨブに迫った。
そこにはヨブに対する憐みも、
彼の悲惨な状況をともに悲しむ言葉も皆無だった。
ふっ!知恵の言葉か。確かに素晴らしい。
しかし、今の私は、この苦しみの意味を知りたいだけなのだ。
ビルダデよ、何を言っているんだ。
お前が言っていることなんぞ、百も承知だ。
しかし、何が悪で、何が清いと言うのだ。
神様は「神」なんだ。人ではない。
人間がどんなに苦行を積んで善行を重ね、禁欲しても、
神様の求める義、清さには手が届かない。質が違う!
そんなお方の前で私が自己弁護したところで、
立場が違いすぎて話にならない。
神様が「白」といえば、「黒」も「白」になるさ。
悪人も善人も神様が滅ぼそうと思えば滅ぼされ、
祝福しようと願われればそうなるのさ。
不公平じゃないか!
ああ、神様は「神」だ。人間ではないのだ。
どんなに大声をあげて、自己弁護に時間を費やしても。
だめだ!だめだ!! 通じないんだ、言葉が!!
通訳が!仲介者が!
とりなしてくれる第三者が必要なのだ。
だが、いない!
本当にいないのか?!!
ヨブは胸をかきむしった。
痩せこけた胸にはあばら骨が浮き出て、
膿に汚れた皮膚が張り付いていた。
それはヨブの孤独に、
恐怖と絶望が絡みついているようにも見えた。
げっ!
胃が捻じ曲げられたように痛んで、異物が込み上げた。
頭を下げて膝を曲げ、吐き出そうと、
口に指を押し入れた。
だが、何も出てこなかった。
その乾いた口の中に、風に舞った土ぼこりが入り込んで、
ぜいぜいと背中を震わせながら咳をした。
カサカサになって膨れ上がった唇の端を、
ほこりまみれの手の甲で拭った。
かさぶたが破れ、どす黒い血の塊がついてきた。
ヨブはそれを凝視した。
いや!神様は私に罪のないことを知っておられる!!
こんな状態だが、神様が私を愛しておられることは確かだ。
私は、丹精込めて造られた神様の作品だ。*1
しかしそれを今、元のチリに返そうとなされる?
なぜ? なぜだ!
私に命の恵みを与え、ひととき光の中に憩わせて、
今、光も届かない暗黒の地へと落とされるのか?
ああ、こうなったら、いっそひと思いに死んでしまいたい。
神様、私の命は後どのくらいなのですか?
どうかもう、私の命をとってください。
私にかまわないでください。
それが今の私の慰めです。
ナアマびとゾパルは、
口元に手を置いて、コホンと咳をした。
やれやれ、口達者なヨブよ。
「私は正しく、神の目に清い」だと?!
そんなため口は止めるんだ。
神様はお前を憐れんで実際の罪よりも
ずっと軽いお裁きをなさっておられるのがわからないのか?!
そう言ってゾパルは顔をしかめ、息を止め、
眉根に深いしわを寄せた。
鼻を覆った袖口がパタパタ音を立て、
ゾパルは倒れそうになる体を、
両足を踏ん張って耐えた。
突風が彼を襲ったのだ。
風向きが変わったらしい。
*1:「あなたはわが内臓をつくり、わが母の胎内でわたしを組み立てられました。」詩編139:13