列王記
見渡す限り、遮るの物の何も無い場所。 背の低い雑草のたぐいがあたりを覆っているだけ。 そして、その先には、まだ誰の足跡も付いていない白い砂地が水際まで続いている。ナアマン将軍は馬上でしばらく行き交う風の音に耳を澄まし、キラキラと戯れながら時…
ゲハジはその日、そわそわして、気が落ち着かなかった。 スリヤ王の覚えめでたいナアマン将軍がやってくるからだ。彼はスリヤの王が書いた、とんでもない難問を携えて、イスラエルのヨラム王のもとにやって来た。 現在も緊張関係にある国からの訪問者は、幾…
エエッ!! ここには五つのパンと二匹の魚しかありません!!これで5000人以上の人たちの腹を満たせと???どう考えたって、首をひねったって、出来るわけがありません。逆さになって、一回転したって、どうしょうもありません。でも、やっちゃった!!…
ハクチョ〜〜ン!!部屋の中に可愛いくしゃみが七回も続いて、子供がベットの上で目を開けた。エリシャは部屋のドアを開けてゲハジに言った。母親を呼んできなさい。!!ゲハジが階段を駆け降りた。 入れ替わるように母親が、裾を足に絡めながら駆け上ってき…
風が心地よかった。静かに目を閉じて、エリシャはこの家の女主人のことを思っていた。あたえられた部屋はいこごちよく、食事はおいしかった。いつしか、これが当たり前のようになって、彼はふと気づいたのだ。何か、お礼をしなければ・・ 彼は目を開け振り向…
あら、白ちゃん、またあの人たちが・・小さな土埃をまとわり付かせながら、その人たちは通り過ぎていった。いつの間にか、彼女はその人たちに向って軽く頭を下げるようになって、相手も、それに応じてくれていた。周期的に彼らは彼女の家の前の道を通って、…
彼女は何かよからぬことでも行うかのように、あたりに目を配って、それから、そっと両手でドアを閉めた。夫が突然亡くなり、茫然自失の日々。そんな彼女の前に、目つきの鋭い男たちが現れた。昼と無く、夜となく、彼らはやってきて、彼女がドアを開けなけれ…
「イスラエルの連合軍があたふたとモアブから去ってゆく」石工たちはメシャ王の命じたままに、高さ1.2メートル、幅60センチ、厚さ35センチの、黒く光る立派な玄武岩の表面にその文字を刻み付けていった。今回の戦のきっかけは、父の代から続くイスラ…
エリヤは一枚の衣をこの地上に残して、跡形も無く掻き消えてしまった。エリコの町はその話題で溢れていた。なんでも弟子のエリシャさんがその後を継がれ、ヨルダン川の水を止め、川底を歩いて帰って来られたとか・・そんなことが出来るものかねぇ?モーセ様…
ビリ! ビリ、ビリッツ!唇が歪み、奥歯がギリギリとなる。青筋が手の甲に浮かびあがり、エリシャは着ていた着物を裂いた。 大きく踏ん張った足元には、師エリヤの外套が無造作に置かれていた。 そのまま、彼は動かなかった。 どのくらい時が過ぎたのだろう…
川を渡りきって背後に目をやって、エリシャはギョッとした。ヨルダン川が、何食わぬ顔して、静かに流れていたのだ。彼は、足元に水が迫って来はせぬかと、慌てて後ずさった。そして、そのまま気ぜわしくエリヤの姿を探して、走った。 何を慌てているのだ。今…
『エホバ大風をもてエリヤを天に昇らしめんとし給ふ時・・』その『し給ふ時』とは、それは預言者仲間には知らされていたのでしょうか?いたのでしょうね。 べテルで、預言者のお喋りさんが、「わし知ってるでぇ〜〜」と、軽率にエリシャに擦り寄ってきたので…
『主がつむじ風をもってエリヤを天に上らせようとされた時・・』 え!神様、あなたはエリヤさんを召されるのですか?なんて唐突なんだろう。 いや、唐突でないかも。カルメル山での熱い戦いも一過性だった。人々の驚嘆のため息と熱い眼差し、拍手喝采。すべて…
ひよこのお散歩も、いよいよ「列王紀」の後半に突入です。 アハブ王に続き、その子アハジヤが北イスラエルの王様になりました。それにしても、たくさんの王様が入れ替わり立ち代りの激しい北イスラエルですが、後半はどうだろうと読み始めたら、突端から就任…
ミカヤは二人の王の前に出ると、いんぎんに頭をたれて、挨拶をした。 「ミカヤよ、われらはラモテ・ギレアデと戦って、勝算はあるか、ないか」ミカヤはニコリと笑って言いました。「大勝利、間違いございませんぞ。神様が助けてくださいますから」アハブは一…
その日、アラム王の武装は軽装だった。 周囲の兵士たちと然して変わらず、ごく普通の戦車に乗っていた。いつもはまがまがしく王の周りを取り囲むべき親衛隊の姿も目に入らなかった。 目指すはアハブ王のみだ!!他の小者には構うな」それが敵陣を探ってきた…
イゼベルは鏡の中の自分に見入っていた。 年月を重ねたけど、それなりに落ち着きのある美しさが身についていると思った。体形は輿入れした当時と然して変わらず、目の輝きも衰えていない。 髪飾りが、綺麗にまとめ上げられた髪につけられた。彼女は満足そう…
アハブ王は手入れの行き届いた王宮の庭で、地続きのブドウ畑を見ていた。以前その畑を見学したが、日当たりもよく、そこから眺める景色は格別だった。 ほしいなと彼は思った。 突然、王はフルフルと首を振った。 それから、あごの下のたるんだ皮膚を右指で摘…
「あなたのおっしゃるとおりです。」アハブ王はその言葉を、断腸の思いで、 敵方からの使者に伝えた。今、サマリヤの町はスリヤの王、べネハダデと32人の王たちからなる連合軍によって包囲され、明日にも攻め滅ぼされようとしていた。この美しいサマリヤを…
「何を興奮しているのか?」エリシャはエリヤにキラキラ輝く瞳を向けていた。エリヤは、その眼差しにぴたりと見つめ返した。 あなたは今や預言者のヒーロー。 そのあなたが常日頃愛用していらっしゃる外套を、若者の体に掛けられたのでしょう。 当然ですよ。…
夕の供え物の時間は? 何時ごろ?それによって随分と、 この場面の雰囲気が変わってくるのだが・・夜でなく、夕方。 夕方であって、夜ではないのですね。「夜」と訳してあるのもあるけど・・時間なんてこの場合関係ないね。でも、大いに関係があるのだ。 ひ…
エリヤは崖下から吹き上げてくる潮風に身をゆだねていた。 アレク湾の向こうには弧を描いて水平線が広がっていた。 彼が見つめる先の海と空の狭間は、ゆっくりと夜の幕を閉じた。 すると、幼子の頬を滑るようにして、 昼の女王がしずしずと 沢山の侍女を引き…
お前は国のこちら側を、わしはあちら側を、それぞれ手分けして探そう。アハブ王は宮殿の管理人オバデヤに言った。 長引く飢きんに、王が保有する馬やラバの食料が底を突いてきたのだ。 このままでは全滅だ。 王は必死だった。オバデヤは王に示された道を進ん…
それにしてもあの男は何者なのか、 三年が経とうとしていたが 彼女にはよくわからなかった。彼の風貌は変わっていた。 伸び放題の髪と髭。 その中にうずもれるようにしてある瞳は、外観に似合わず、いつも穏やかでやさしかった。らくだの毛のマントをはおり…
申し訳ございませんが、 あなた様に差し上げるパンはありません。 彼女はゆっくりと振り向き、少しうつむき加減に身をかがめながら言った。 埃まみれの旅人はそれでも穏やかに彼女を見つめていた。 その男は、ザレパテ村の門の入り口で彼女を呼び止めて言っ…
ギレアデのテシベに預言者エリヤはいた。 ある日突然、神様のお告げがあって、 彼はサマリヤに行き、アハブ王に言った。「私が雨よ降れ! と言わない限り これから数年は日照りが続く。 雨はおろか露もおりない。 主の言葉だ!」田舎から出てきたばかりのエリ…
ジムリのおかげで、バアシャ王朝はあっさりと終わり、 彼のおかげで、オムリは王になるチャンスにめぐり合えました。 彼の動きは素早かった。謀反人ジムリは成敗された。 私が王様だ!と、宣言しようとした時、 王様は、テブニ様だ!と叫ぶ人々と、オムリ様…
何これ?三日天下はあの人でしょぉぉ〜。 それでもって、 あなたはぁ〜、、七日天下なのぉぉ〜〜。 イスラエルの王様バアシャ様はお亡くなりになる前に 預言者エフーの言葉を息子に伝えたのでしょうか?ぶるる。。あのような恐ろしい言葉を、可愛い息子に伝え…
アサ王の治世36年に、イスラエルの王バアシャがユダに攻め上ってきた。 彼はヤラベアム王朝二代目のナダブ王在位2年目に ギベトンで謀反を起こし、 ナダブ王以下、ヤラベアムに属する者をせん滅しました。これはべテルでヤラベアム王が香をささげようと祭…
「主はダビデのために、エルサレムにおいて彼に一つの灯を与え、 その子を彼の後に立てて、エルサレムを固められた」 あなたはいつも、ダビデのゆえに・・とおっしゃられる。 彼のすべての麗しき行為よりも ただ一点のしみが そのしみが、 拭いきれなく 私の…