ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

兄さん、僕です!!ヨセフですよ!!(38-36)

ベニヤミンの声に兄弟の手が止まった。
突然あたりの空気が固まって、長い時がたったような気がしたが、
それは一瞬だった。
ユダは駆け出し、ベニヤミンを突き放すようにして、
袋の中身を見た。
     あった、あったのだ!!
手入れの行き届いたそれは、陽の光の中で無邪気に微笑んでいた。

執事は傍で、それらを無表情に眺めていた。
  それは昨夜、主人のヨセフに頼まれて自分が仕込んだことだったから・・
  なぜ主人がこんなことを命じたのか?彼にもわからなかった。
執事は少し気の毒に思いながらも、声を荒げて言った。

      「やっぱりあったではないか」

兄弟は一言も口を開かずきびすを返した。
玄関先では宰相が腕組みをして待ち構えていた。

     「お前たちはなんということをしたんだ。
      恩を仇でかえすのか」

ユダは言った。

     「これは、我々には身に覚えのないこと。
      しかし、杯が出たいじょう、弁解はしません。
      我々は、あなたの奴隷になります」

ヨセフはグッと唇をかんだ。

     「いや、杯を取った者だけでよい。
      後は父親の元に帰りなさい」

ユダはヨセフの前ににじり寄って言った。

     「あなたはパロのようなお方です。
      どうか怒らないで聞いてください。
      この子の帰りを待ちわびている年寄りがいるのです。
      この子は腹違いの母の子で、父の最愛の妻の子です。
      もう一人男の子がいたのですが・・・
      今はこの子しか、父の楽しみはありません。
      この子を残してゆけば、
      父は悲しみのあまり死んでしまうでしょう。
      失った先の子のために、
      一夜にして白髪になったのです。
      どうか、私を奴隷として残し、
      他の兄弟は父の元に帰してください」


ヨセフは突然、震える声で言った。

      「みんなこの部屋から出るのだ。
       私とこの者たちだけにするのだ」

部下も召使達もびっくりしながらも、部屋を出てゆくと
ピタリとドアに聞き耳をたてて動かなかった。

ヨセフは突き上げる涙を、声を、
      止めることが出来なかった。
兄弟はどうしてよいかわからず、
ただただうつむいて、時の流れるのを待った。

ヨセフの心が静まると彼は言った。

      「兄さん、僕です!!ヨセフですよ!!
       あなたがたが売り飛ばしたヨセフです」

またまた10人の兄弟の心は氷つき、恐れでバリバリと音を立てた。
ユダは額ずいたまま目を見開いた。
床の上で蟻が驚いたように右往左往していた。

      「全てが神さまのお導きだったんです。
       さあ、近寄って私を見てください。
       あなた方は自分を責めることはありません。
       先にこの国に来て、
       あなた方を迎える準備をしていたのです。
       この飢饉は後5年続きます。
       家に帰って父に伝えて下さい。
       ヨセフはエジプトで総理大臣になりましたと。
       心配せずにエジプトへ来るようにと」

全てを聞き終えると部下はパロの元に走った。

       「なに、ヨセフの兄弟が来ているとな。
        父親もカナンの地で健在・・
        よし、すぐにエジプトに来ていただこう。
        一等地を彼らのために用意しよう。
        ヨセフに伝えるんだ。
        女子どもや、年寄りのために車も用意するように」

ヨセフはベニヤミンを抱きしめて泣いた。
そして、兄たちとも抱き合って泣いた。

兄弟たちに父への贈り物や迎えの車を託し
さらに、それぞれに晴れ着を贈り
ベニヤミンには銀300と晴れ着5枚を与えた。

        「途中、争ってはいけません」
彼は一言付け加えることを忘れなかった。
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