モーセは足を止めて、額の汗を拭った。
ヨルダンの河口の東19キロにあるピスガ山の最高峰ネボ山。
頂上はもう目の前だ。
120歳の彼の目は霞まず、気力も衰えていなかった。
今、彼の心は若者のように踊っていた。
あと少し登れば、待ち焦がれた約束の地を目の当たりに出来るのだ。
彼は疲れも見せずに足を速めた。
突然涼しい風が頬をかすめた。
視界が開けたのだ。
そこにはゲレアデの全地がダンまで見渡せた。
ナフタリの全部とエフライム、マナセの地とユダの全地を、西の海まで眺めることが出来た。
ネゲブと低地、しゅろの町エリコの谷とゾアルまで見渡せた。
モーセは緑に溢れたこれらの地に感動した。
風に乱される真っ白な髪と髭が、緑の木洩れ日に染まっていった。
しずかだ・・モーセは今見たばかりの景色を吸い込むようして目を閉じ、まぶたの裏に焼き付けた。
そうして静かに、彼はこの地上の務めを全うしたのだった。
**********
モーセの墓は何処か?って。
彼の偉大さのゆえに、民が偶像に祭り上げないようにとのご配慮かも知れませんが、
わかっていません。
このネボ山はこれからも時々、出てきます。
どんな形で現れるのか、楽しみですね(^_-)-☆
・