「やっぱり今日はおかしいよ、朝からこれで7回目だよ。
一体、何時までこんなことが続くのだい」
ラハブの母は大きく手を振り動かしながら、イライラした口調で言った。
すでに太陽は大きく傾き、西の一角を目指している。
「そろそろ戻ってくる頃でしょ。
8回目も回るのかしら・・ 」
ラハブは、恐る恐る開けた窓の隙間から城外を伺った。
そこに、7回目を回り終えた行列の先頭が目に飛び込んできた。
「ぶおおおぉ〜〜〜」と尾を引くようにラッパが鳴り響き
太陽の光を浴びてなにやらキラキラと光っている。
「ブぉぉぉぉ〜〜」
ラッパの音が一段と高く鳴り響くと
整然と隊を組んでいた行列から、何か破裂でもするかのような大きな声が沸き起こった。
ラハブは細くあいていた窓を慌てて閉じた。
「ぐわをををををw〜〜〜〜〜・・」
ラハブの体が一瞬、宙に浮いた。
それからズド〜ンという鈍い音が足元から這い登ってきた。
彼女はフラっとめまいのようなものを感じて床に曳き倒された。
テーブルは命を得た物のように動き、壁に当たって
早めの夕餉のスープやパンや何やかやがこぼれ散った。
幼い兄弟がそれらを頭からかぶって、椅子から投げ出され
「ぎゃ!!」p(≧□≦)qと声をあげて泣き叫んだ。
母は父が寝ているベットの端にしがみついていた。
父は上体を起こし、大きな握りこぶしを作って、厳しい顔であたりを見ていた。
ラハブは幼い兄弟を抱き寄せると、母の傍にしゃがみこんだ。
ばらばらと土埃が落ちてきて、
部屋全体がキシキシと忙しない音を立て
窓の鍵は外れ、外壁にあたって、ガタン、ガタンと音を立てている。
「逃げなくて大丈夫かい。
ほら、壁にひびが・・」
揺れが治まって来ると怯えたように母親は言った。
ラハブも外へ出たかった。
全開した窓から左右を見て驚いた。
すぐ近くの城壁が崩れ落ちていた。
そうして、そこから抜き身の剣をかざしたイスラエルの兵士が、
ばらばらと城内に入っているのが見えた。
ラハブは恐ろしくなって窓際を離れ
ドアの覗き穴から外を見たけれど、崩れた壁が見えるだけだった。
耳を澄ますと、逃げ惑う人の声や、悲鳴が飛び交っていた。
彼女は弟達の所に戻ると、
彼らの耳を塞ぐようにして両脇に抱えた。
「いま外に出ても逃げられないわ。
父さんは動かせないし
あのスパイの言葉を信じましょうよ。
必ず助けに来てくれるって。
とにかく、この部屋から出ては駄目!!」
ラハブは、言い切った。
二人のスパイがやってきたのは
辺りが暗くなってからだった。
約束どうり、ラハブの部屋に居た親族は皆助けられ
イスラエルの宿営の外に住むことが許された。
*
歴史がず〜〜とさかのぼって、
新約聖書の一番最初のページの、さる高貴なお方の家系に
『ラハブ』という名前が登場・・・
その『ラハブ』は、この遊女ラハブのことだったとか・・・・
敵国の「神」の力強い業に、女の直感を?働かせた遊女「ラハブ」
彼女は奇数な運命の波に運ばれていったのでしょうね。
イスラエルの進軍・・・・・それは、彼らの「神への従順」を試される戦いでもあるんですね。
『私が、今日、あなたがたに命じる戒めを、ことごとく守らなければならない。
そうすればあなたがたは強くなり、
渡って行って取ろうとする地にはいって、
それを取ることができ、
かつ、
主が先祖達に誓って彼らとその子孫とに与えようといわれた地、
乳と蜜の流れる国において、
長く生きることができる』
申命記:11章より