ヨシュアの後に忍び寄った影は、しばらく彼を見ていた。
その影は、かって彼とともにカナンの地の偵察隊として加わった仲間の一人だった。
夕日に染まるヨシュアの姿が、更なる輝きを増して
それから静かに夕闇の中に沈みかける頃
その影はまたゆっくりと動いた。
その気配に気づいてか、ヨシュアの体もゆっくりと動いて目と目が合った。
「ああ、カレブ・・ ひさしぶりだな・・」 ( ゚^∀^゚)σ
二人はお互いの健在を確かめるかのように、肩を抱き、背中を叩いた。
そうして過ぎ去った年月が手のひらを通して伝わってきたとき
お互いに、歳をとったものだと自嘲しあった。
「それで、どうしたんだ。お前が一人、ここへ来るとは・・」
「いや、なにね
ユダ族の長老たちも来ているのだが・・
こうして二人で向き合うのもいいかと思ってね。
昔のことだが・・
私たちがエルシコの谷から葡萄の房を担いできた時
モーセさまがおっしゃった言葉だが、覚えているかい・・・」
「ああ、そのことか、
なんだ・・お互い考えることは同じだな」
「覚えていてくれたのか、有難い。
それで話しやすくなったよ。 モーセ様が
『お前が初めて踏む地はお前たちのものだ」と言われたが
私が初めに足を踏み入れた所は、
いまだにアナキ部族が力を持っていて、こちらの隙を狙っている。
私はすでに85歳だが、気力だけは当時のままだ。
子どもも孫もたくましく成長し、最後のひと働きをしようと思って・・
どうだろう・・・わたしにあの山地をくれないか・・」
「もちろんだ!カレブ。
アナキ部族が立てこもる山地と、
我らの大先祖アブラハム様が天幕を張った由緒ある場所、ヘブロンもだ。
そして、マクペラの墓地を管理してくれ。
この地は強敵が残る地だ。心してかかれ」
「ヨシュア、お前がそう言ってくれたので、心強いよ。
必ずかの地を我らの譲りの地として、管理するよ」
カレブはヨシュアの言葉を聞き、衣を翻して帰って行った。
その後姿は45年前のそれよりも、一回りも二回りも大きく、自信と確信に満ちていた。
ヨシュアはそれを見送りながら |ω・`)ノ~~ 、ゆるりと髭をなでおろした。満足だった。
ヨシュアのすべきことは決まっていた。
すでにヨルダン川を渡る前に決まっていた土地分割をはっきりとさせること。
それが彼の最後の仕事だった。
(*'∇')/゚・:*
*その後、ヘブロン(旧・キリアテ・アルパ)は、カレブによって治められ、戦争が止んだ。
*マクペラの洞窟(お墓)
初めにサラのために、アブラハムが買い取った所。
そこに、アブラハム、イサク、ヤコブも・・