ギデオンは酒ぶねの中にいた。
中で、麦を打っていた。
日頃のイライラをぶっつけるかのようにして
それでも麦を傷くけないよう気を配りながら・・
気を配るのは他にもあった。
時折仕事の手を休めて、そっと耳を澄ました。
今のところ、穏やかな鳥の声が聞えるだけだ・・
かれはほっとして、空を見上げた。(^。^)
空は青かった。
イスエルは7年の間、ミデアンびとに翻弄されていた。
種を蒔けば、彼らがその収穫を持ち去った。
アマレクびとも東方の民もやって来て
陣をとり、地の産物を荒らし、それは、ガザ近郊にまで及んだ。
かれらは家畜と天幕とを持って、飛び交うイナゴのように襲って来た。
こうしてイスラエル人は、山地の洞窟を住みかとし
食べる物にも窮しながら、息を潜めての生活だった。
ギデオンは耐え切れなかった。当然、同胞の民も、耐え切れなくなった。
彼らは神様の名を呼んだ。
すると、一人の預言者が現れて
神様との契約を破ったからだと指摘する。
ギデオンもそれは分っていた。
分っていたが、それを公に口にする勇気はなかった。
そんな立場の人間じゃあないし・・
彼の答えはいつもそこに落ち着いた。
それでも彼は思った。
あの偉大な神様はどうしたのだろうと・・
そんな彼の酒ぶねに向って、歩いてくる人がいた。
彼の姿は真昼の太陽の下でゆらゆらと揺れていました。
敵なのか味方なのか・・
ギデオンは酒ぶねの中、
まだ気付きません・・・
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