「お母さん、未亡人や、異邦人や貧しき者のために
落穂ひろいが出来るんですって。
わたし、親切な方の畑に行って来ようと思うのですが・・」
ルツの言葉にナオミの胸は詰まった。
息子さえ元気だったら、こんなことをさせなくても済んだものを・・
そう心のうちで思いながら、日が昇る前に、嫁のルツを送り出した。
・
ルツは迷うことなく、前日探し当てた畑へと向かった。
働いている人たちの顔は穏やかで、楽しそうだったから・・・
案の定、すぐ落穂を拾わせてもらうことができた。
男奴隷が大麦を刈り、女奴隷がその麦を束ねてゆく。
その後に残った穂を、拾わせてもらうのだ。
ルツは一生懸命彼女たちについて回った。
そんなルツの姿に気づいた人がいた。
ベツレヘムから見回りに来た畑の主人、ボアズだ。
「あの娘はどうした?」
「最近、モアブから姑についてこの地にきた未亡人のルツです。
今朝、『落穂を拾わせてください』とやって来て、ご覧のとおりです」
「あの娘か、うわさは聞いている」
ボアズはしばらくルツの姿を見ていたが、つかつかと彼女に近づいていった。
「落穂は拾えるかい?
遠慮は要らないよ。刈入れが終わるまで、ずっとここで拾うといい。
若者たちにも話しておくから、喉が渇いたら、みんなと同じ水を飲みなさい。」
「ありがとうございます。こんな異邦の女に優しいお言葉・・あなた様は?」
「わたしはボアズだ。お前のことは聞いている。
イスラエルの神様がきっと良くして下さるだろうよ」
ルツはボアズの言葉に涙ぐんだ。
太陽は中天に輝き、ルツは女奴隷たちの端に隠れるようにすわった。
すると、ボアズが声を掛けた。
「さあ、ここに来て一緒に食事だ。」
そういって、彼女のために麦粉のパンや炒り麦を取り分けてやった。
その量は、彼女がお腹いっぱい食べても有り余るほどだった。
午後の作業が始まるとボアズは奴隷たちに言った。
「あの女に親切にしてやりなさい。
落穂もわざと落としてやりなさい。
(ちょ〜っと〜、やりすぎではぁ?)
そんなわけで、その日集めた麦の穂を打つと、36リットル枡に一杯になった。
ルツは急いで町に帰り、ナオミにそれを見せ、昼の残り物を一緒に食べた。
「美味しかったよ。それにしても、よくこんなに集められたものだね。
一体どこの畑に行ったんだい」
ナオミは不思議そうにルツを見つめながら言った。
「ボアズさんの畑です。奴隷たちも穏やかで、・・
今日は、ボアズさんがお見えになっていて、
とっても心の大きな、お優しいお方でした。
それに、収穫が終わるまで、落穂を拾っても良いんですって」
「おお、神様・・・」ナオミは思わず目を閉じて言った。
「ルツや、その方はわたしたちの親戚だわ。これも神様のお導き。
その方の言われるように、その場所で拾わせていただきなさい。
お前は若くて綺麗で、そのうえ未亡人だ。
他所に行って危険な目に遭うともかぎらないからね。」
彼女は両手を胸の上で握り締めた。
「さあ、神様に感謝を捧げましょう。
親戚のボアズさんのためにもね」
その日、二人の女の胸の中では、それぞれの思いを込めて
新しい希望の光が差し込んでいた。o(^O^*=*^O^)o
・・・・
ボアズはルツのことを知っているって言ってた・
当然ナオミのことだって知ってたはず・・
ナオミだってボアズのことを知ってたはず・
なのに、帰って来ましたって、知らせなかったのか?
そしたら、ルツが苦労して働き場所を探す必要なんか無かったのでは?
先祖の土地を売り払って出てゆくとき、何かトラブルでもあったのだろうか?
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「祈り」と「希望」、これはいつも対になっていて、
祈りは常に、希望に向かって立ち上ってゆく光。
希望の無い祈りはありえないし、祈りの伴わない希望は、むなしい。
祈りに偽りがあってはならないし、希望は祈りによって、より美しく輝く光。
「祈りと希望」が出会ったその時、新しい現実が始まる。
それは時に喜ばしく、悲しく、人を傷つける。
「祈りと希望」
ひよこも、はやく大きくなりたいと思う反面、その先には、
美味しそうに照り輝いたローストチキンの姿が現実に迫ってくる。
だから時に、ひよこにとっての「祈りと希望」は、
空想の世界を一人さまようことで、良しとしているところがある・・・
・・・
空想癖のあるひよこ
これは「罪」なのか?
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