思わず叫んでしまったルツ、その声は震えていた。
「そうか、そのことか。
いつその話を持ってくるかと実は待っていたんだよ」
ボアズはルツを気遣いつつ、優しく声をかけた。
「お前は本当に良く出来た人だ。
夫に仕え、姑につかえ、
その上、色々と誘惑もあるだろうに、その身を清く保ってきた。
こんな年寄りだが、喜んで引き受けよう。
しかし、私よりも近い親戚がいるから、
まずは、その人と話をしてこなけれないけないな。
とにかく今夜はここで休みなさい」
こうしてルツはボアズの足元に伏して、夜を明かし、(∪。∪*)=3=3=3
明け方近くにナオミの元に帰った。
・
軽くドアを叩く音にナオミは頭を上げた。
昨夜のままの姿で寝てしまっていたのだ。
急いでドアを開けると、
きらきらと輝いた瞳のルツが、
勢いよく彼女の腕の中に飛び込んできた。.+:。(ノ^∇^)ノ゚.+:。
「まあ、まあ、
お前の顔を見ただけで、良いお返事をいただけたとは思うけど
どうだった」
ナオミはしげしげとまぶしそうに、嫁の姿を眺めた。
ルツはその視線に頬を染め上げながら、
それでも、躍る心を抑えつつ(*μ_μ)σ| モジモジ・・・
「おかあさま、
ボアズさんはわたしの言葉を、みな受け入れてくださいました。
でも、もっと近い親戚が居るので、その方と相談するそうです」
「そうかい、あの方は誠実なお方だから、
お前を悲しませるようなことはありませんよ」
「それから
空手でお母さまのところに帰ってはいけないと仰って
大麦21リットルを持たせてくださいました」
ルツがテーブルに置いた外套を広げると、
大麦の山が音もなく崩れた。
「おお、そうですか。これはまあ、・・・
ルツや、お知らせがあるまで、
静かに待っていましょう。
ボアズさんは今日中にも、何か知らせてくるでしょうから」
・
その頃ボアズは、町の広場に立っていた。
彼の足が動いた。
目ざす相手が見つかって、躊躇うことなく声をかけた。
「おや、ボアズさん、久しぶりだな。
ところで話とは何のことかね」
「すぐに決めなければならない事があるのです。
今、証人として町の長老10人にも集まってもらっています」
そういって、ボアズは長老たちのところに彼を案内した。
「実は、親戚のエリメレクの土地買い取りの事なのですが、
あなたが一番近い親戚なのです」
「ああ、そうだな。もちろんわたしが買い取ろう。
これは親戚としての務めだからな」
「それは良かった。
それでは、ナオミと一緒に来た異邦人の女で、未亡人のルツをも引取って、
生まれた子に、エリメレクの土地を相続させてやってください」
「おいおい、未亡人が居るのかい。
それはだめだな。それでは、わたしの財産が減ってしまう。
その権利は、ボアズさんに譲ろう」
彼は自分の靴を脱いでボアズに渡した。
渡された靴を持ちながら、証人たちに向かってボアズは言った。
「今お聞きの通りです。
皆さんはこのことの証人です。
わたしボアズは、一族の中からエリメレクの家系が断絶しないように
親戚としての務めを果たすため、その土地と亡くなったマロンの妻ルツを買い取ります。
また、子が生まれたら、その子にその土地を相続させ、
エリメレクの家系を起こさせます」
長老たちはこのことの証人としてボアズを祝福した。
・・
ナオミの腕の中には、血色のよい赤ん坊が声を上げて笑っていた。
このところ彼女は家の前で、そうする事が日課になっていた。
通りかかった女たちは立ち止まり、ひとしきり赤ん坊を眺め
ナオミと声を交わし、笑いあった。
「よかったわね。あんたは神様に祝福されているわよ。
あんなに優しい嫁さんと、こんなに可愛い孫に恵まれたんだもの。
たとえ、7人の息子がいたって、
あんなに良い嫁さんにめぐり合えたかどうか」
ナオミはそんな言葉がうれしかった。
日に日に、孫の重みで腕がしびれてきても・・
ルツは扉の影から姑の横顔を眺め、
赤ん坊の可愛い唇を求めて、
にじみ出てくる胸の痛みに、幸せをかみ締めるのでした。
おしまい
・・*☆*――*☆*――*☆*――*☆*――*☆*――*☆*――*☆*――*☆*
ボアズはエリコのカナン人「遊女ラハブ」の子どもだったとか・・・
ルツの赤ん坊の名前は「オベデ」
オベデはエッサイの父で
ダビデ王の祖父となった。・・・そして、その家系は新約の主人公へと続いてゆくのですが・・・。
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