サウルに向かって、手を振りながら駆けてくる者がいた。
なじみの使用人だ。
「サウル様、ろばはすでに見つかりました。
ご主人様が、今、心配なさっておられるのはあなたです」
神の丘として名高い
タボルの樫の木の下では
神様を礼拝するために
三頭の子やぎを連れた人と
三つのパンを持った人と
ぶどう酒の入った皮袋を持った人に出あった。
彼らはサウルを見ると、喜色を顔に表して挨拶し
彼の手にパン二つを捧げた。
いぶかしがる使用人にパンを持たせて、
サウルの足はギベアに向いた。
サウルが町に近づくと、
立琴、手鼓、笛、琴などがかき鳴らされ、
坂の上から群集が駆け下りてきた。o(^O^*=*^O^)o
その群集を避け切れずに
主従二人は巻き込まれた。
人々の肩と肩とがぶつかりあい、
楽器の音が脳しょうを揺り動かし
預言者が神を褒め称え、預言をしながら彼を取り囲んだその時
サウルの頭の中が一瞬ぴかりと金色に輝き
手鼓の音が、紺碧の空に向かってポーンと高く響いた
「イスラエルの主、王に感謝せよ。
その恵みはふかく
その慈しみはとこしえにたえることがない」
サウルは思わず口元を押さえた。が、
その指の隙間から、言葉が湯水のようにあふれ、止まなかった。
群集よりも肩から上、高かった彼その声に、人々は振り向き
そして、驚いた。
「あれはキシの子、サウルではないか?
彼は、預言者だったのか?」
群集の目が彼に注がれ、引き潮のように騒ぎが収まっていったとき
ちょっとちょっと、と掻き分けて、サウルの前に立った者がいた。(@⌒ー⌒)ノ
おじだ。
サウルがサムエルのところに、伺いをたてに寄ったことを話すと
彼の言葉遣いが改まった。
「それで?
あなたにどんなことを話されたのか
洩らさずにどうぞお話しください」
「ロバがすでに見つかったといわれました」
サウルはそれ以上、言わなかった。
それにしても、ここギベアにはペリシテ人の守備兵が駐屯して
人が集まったり、騒いだりすると
つかさず割って入って蹴散らしてしまうのに
この日の騒ぎに、彼らは無頓着だった。
なので彼サウルは、何事もなく父の元に帰り
安堵する父親の顔を見てほっとした。
しかし心のどこかで
サムエルの言葉がすべて当たったことへの
戸惑いと不安と、そして、
今まで経験したことのない何かが、彼の胸深くで吹き荒れていた。
私が王様だって言ってたな・・
何でも好きなことをするようにだって・・
彼は頭を振って肩を落とした。ハァ━(-д-;)━ァ..
それからしばらく、穏やかないつもの生活が続いたある日、
イスラエル12部族に
サムエルの声がかかった。
ミヅパに集まれ!!
それは、農夫サウルの胸に複雑なさざなみをたてさせた。
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