不愉快だ!
王はそこを通るたびに
胸のうちでその言葉を履き捨てた。
胸がむかむかした。
それはレハベアムが父ソロモンの後を継いで5年目のことだった。
エジプトの王シシャクが、エルサレムに攻め上ってきたのだ。
彼は神殿や宮殿にある宝物を物色し、父ソロモンが貯えた価値ある品々を持ち去った。
その時、
ソロモン自慢の金で出来た盾をも持ち去られたので
レハベアム王はすぐ青銅の盾を造って門の警備兵にあてがった。
なんだこれは!なさけない。
兵士たちは悔し涙をぐっと飲みこみ、
輝く金の盾を懐かしがった。
以前の物と比較することもはばかられるほど地味目で、王も兵士も士気を欠いた。
レハベアムの母の名はナアマといってアンモン人だった。
彼は王位に着くと父の信仰に倣った。
それはソロモンがすべての妻たちの
それぞれの国の信仰を認めていたので
それは自然な流れだった。
そんなわけで、誰はばかることなく偶像礼拝が蔓延し、
すべての高い丘の上や木陰に礼拝所が建てられ、偶像と、神殿男娼たちの巣窟と化していったのでした。
エジプトからの攻撃は、
そんな彼らの曇った目を晴らすための
神様が放ったつぶてでした。
彼が王座に付いた時、
まさか今のような事態が訪れようとは誰も思っていませんでした。
レハベアムは国を守るため
防衛の町々を造り、武器と食料を貯えました。三年かかりました。
彼が国を強化している時、北イスラエルでは益々悪政が進み
まことの神の祭司やレビ人はその務めと土地を奪われ、
身一つで南ユダに逃れてきていました。
ユダでは偶像が満ちていましたが、
神様が定めたレビ人たちにより、
真の神様礼拝は粛々と守られていました。
国が安定し、やっとゆとりが生まれると、
王は、たくさんの妻とそばめとを得て、
これまた、たくさんの子供たちが与えられました。
その中でも一番愛したのはアブサロム*1の娘マアカでした。
妻がそそのかしたのか、彼が思ったのか、
跡継ぎはマアカが生んだ「アビヤ」だと決めました。
こういうときって、色々ゴタゴタがあるものですが
彼はうまかった。
15もある要害の町々に、特別待遇で子供たちを振り分けました。
やれやれ、これで安心だ。
そして前記したような状態へと転がり落ちてゆきました。
神様はそれを正そうと
エジプトの王、シシャクのエルサレム入りを許されたのです。
シシャクはヤラベアムがソロモン王を逃れて行った滞在先です。
その時、色々密約があったのでしょうか。
突然の出来事でした。
地底からわき上がるかのようにして土埃が地平の向こうに筋を作ってあがり
1200台もの戦車と、
6万の騎兵と、
それに従ってきた無数の人の群れで
地が覆われたのです。
彼らは一気にレハベアムが造った要害の町々を奪い取り、
エルサレムへと迫ったのです。
特別待遇の王子たちに戦う術はなかった。
その時、預言者シマヤが叫びました。
「目を覚ませ!神様がお前たちのしたことに報いられたのだ」
その声に、レハベアムや高官たちの反応は早かった。
即、罪を認めて、神様に謝りました。
それでエルサレムは崩壊を免れたのですが、財宝は奪われてしまったと言うわけです。
だからって、偶像礼拝が無くなったわけではなく、息子アビヤはそんな両親を見て育ちました。
レハベアムは18年間国を治めて、ダビデの町に葬られました。
息子アビヤが南ユダの王となったのは、北のヤラベアム在位18年目のことでした。
アビヤは両親のしていた偶像礼拝を、何の疑いもなく継続しました。
エジプト進入のあの危機は、ぽっかりと彼の頭の中から抜け落ちてしまったのか?
相変わらず、北イスラエルとの小競り合いは続いていた。
ヤラベアムめ!お前のおかげで国は分裂し、兄弟同士で戦う羽目になったのだ。
なんとしても土地を取り返さなくては・・
彼は父の失態には触れずに、打倒ヤラベアムをいつも考えていました。
それはまた、父の遺言でもありました。
三年間でアビヤムの世は終わった。短いね。
それでも彼はヤラベアム在位の終わりごろに、北イスラエルの南部地方を取り返したのです。
父上やりました。
アビヤムはそっと胸のうちで叫びながら、父の元へと旅立ったのではないでしょうか?
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寒いけど?
冬から春へ、
自然が少ないここでも、
五感を通して伝わってくるこの感じ・・・
素敵な日本の四季の移ろいを
ひよこはピヨピヨと楽しんでいます。
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