あら、白ちゃん、またあの人たちが・・
小さな土埃をまとわり付かせながら、その人たちは通り過ぎていった。
いつの間にか、彼女はその人たちに向って軽く頭を下げるようになって、相手も、それに応じてくれていた。周期的に彼らは彼女の家の前の道を通って、どこかへ出かけていた。
これで何度目かしら、あの人たちを見たのは、ねぇぇ?
彼女は腕の中の猫に話しかけた。
みゃ〜、
猫は賢そうに鳴いた。
それからするりとその腕から抜け出ると、軽やかに地面に飛び降りた。みゃ〜、猫は女主人の顔を見上げると、とことこと尻尾をぴんと伸ばして歩き出した。
白ちゃん、そんなに遠くまで行かないのよぉ〜帰ってらっしゃ〜いぃ。。
その声が届いているのかいないのか、この日を境に彼女の前から猫が消えた。
この猫、つい最近まで野良だった。目やにがその片方の目を塞ぎ、背骨が浮き出ていた。右耳の先端を食いちぎられ、土埃の塊のような体にも黒く血がこびりついていた。
可愛そうに、怪我をして、おなかをすかしているんだわ。
彼女は根気よく猫の気を引こうと努力した。そうして猫は彼女との距離を縮めて、気付けばその猫が真っ白な雄猫だと判明し、彼女の腕に身を任せていた。
「ギザギザ耳の白ちゃん」
これが彼の名前になった。
ギスギスした眼差しが消え、警戒心の抜けた目で餌をねだる姿が可愛かった。
それでね、その方たち、何か特別なお仕事をしてる方のような気がするの。
そうねぇ、教師のような、預言者のような。
その方が目の前を通り過ぎる時、なぜか心に涼やかな風が吹き抜けてゆくのが不思議。
ねえぇ、あなた。とっても気になるの。
一度、お食事にご招待してもいいかしら?
それに、・・・、
ギザギザ耳の白ちゃんがあれっきり帰ってこなくなってしまって・・
夫は、妻の話を聞きながらうなずいた。
それから10日ほどたったこの日。
彼女はいつもより気を引き締めて家の前の道を綺麗にした。すでに食事の準備も整い、使用人が、女主人の声を待っていた。
あら、お見えになったわ!
声をかけようと、彼女が小走りに走りよって行くと、旅人の足元から、ギザギザ耳の白ちゃんが顔を覗かせた。
まあ、白ちゃん!!
ギザギザ耳の白ちゃんは、得意げにニャ〜と鳴くと、すばやく彼女の足元に駆け寄ってきて、いつもより力をこめて、彼女のくるぶしに頭を押し付けた。
おや、この猫はあなたの猫でしたか。人懐っこい猫ですね。この10日ばかり、私たちの足元にまとわり付いていたんですよ。
まあ、そうでしたか。
ご迷惑をおかけしたのでは・・
とにかく白ちゃんを連れ帰ってくださってありがとうございました。お礼といっては何ですが、どうかお茶でも召し上がっていってくださいませ。
猫のおかげで、彼女は如才なく二人を招き入れることが出来ました。
旅人の名前は「エリシャ」と弟子の「ゲハジ」。エリシャは牧師兼預言者兼教師として多忙な日々を過ごし、べテルやエリコ、ギルガルなどの神学校を巡回していた。
また、王様の御意見番でもあった。
彼女は彼らを見送る時、シュネムに来た折は必ず立ち寄るようにと約束を取り付けた。
こうして、何度か共に食卓を囲み、彼らの人柄に触れ、その働きの素晴らしさに魅せられた彼女は夫に言った。
ねえ、あなた。エリシャ様のために、屋上に一部屋増設しましょうよ。
もちろん夫も大賛成だ。彼もまたエリシャのファンになっちゃったのだ。
寝台と机と燭台と、それにカーテンと敷物と。ああ、ワクワクしてきたわ。預言者様をお泊め出来るなんて。
彼女はひざの上で丸まっていた白ちゃんを抱き上げて、頬ずりしながら言った。
ギザギザお耳の白ちゃん。ありがとう。
夫は満足そうに最後のお茶を口に含んだ。
親子ほどにも歳の離れた妻は、いつも彼の力の源で、心地よい居場所を用意してくれた。
彼は子のない妻を哀れに思いながら、だからこそ、妻の邪気の無い笑顔を見るたびに、愛おしさで胸が締め付けられるのだった。
犬猫を飼っている方は多いいと思うけど、
最近出会ったペットに亀さんが・・
亀といったら、手のひらサイズの可愛いやつ。
だけどその子は、
ギョギョギョ!!サイズで・・・
それで抱き上げて見せてくださったのがこちら。
お子さんが飼っていたそうですが、結婚してマンション生活へ、
それでお母様が引き取らざるをえなかったとか。
まだまだ成長中の亀の「あきら」君で〜す。