膝がしらが震えている。
声が少し上ずっていたかもしれない。
ぶっ倒れそうな緊張感に、心臓が爆発しそうだ。
初めは物陰に隠れるようにして、
ヨブと三人の友人の話に耳をそばだてていた。
彼らの言葉を聞き漏らすまいと凝視した。
それが、失望の苛立ちに変わったのだ。
自然と体が動いて、ずりずりと、彼らの前に出てきていた。
彼らの風貌はいかにも年配者づらをしていた。
日焼けして深く刻まれた皴の、
その一つ一つに、歴史を感じた。
窪んで奥深くに沈んだ、秘められた泉のような瞳が、
思慮深く彼を見つめた時など、
彼は卒倒しそうなほど感動したのだった。
だから今まで、
じっと我慢していられたのかもしれない。
だが、限界だ!
こんなはずではなかった!
あのヨブの、声高に主張する傲慢な鼻を、へし折ってくれる者は居ないのか!
気付けば袖口を引き裂かんばかりに噛んでいた。
沸々と内側から沸き起こってくるこれは?
これは、義憤だ!!
彼は湧き上がるそれに対して言った。
つややかに張り出した額と、そこにかかる前髪。
混じりっ気のない真っ白な白目と、
くっきりと澄み切った瞳が、濡れたように光っていた。
時折、ほとばしりそうになる言葉を抑えようと、
かみしめる唇は、細いが張りがあって、赤かった。
(どんな顔になるんだか?)
彼の名はエリフ。
両手、両足を広げて立つと、風が袖を揺らし、
大空をゆったりとまい飛ぶ大鷲のような気がしてきた。
彼は高揚した心のまま、ヨブにいった。
ヨブよ!
あなたはずっと「無実を主張し続けた」
「神は不公平だ」とも言った。
「仲保者が必要だ」と叫んだ。
止めたまえ!神様を悪者にするのは。
私が神とあなたとの間を取りもとう。
私は、あなたの三人の友人のように、
無暗にあなたを責めたりはしない。
神様は愛するものを鞭打たれるのだ。
正しい道を示し、
神様のもとに導いておられるのだ。
エリフは、自然界のさまざまな現象を上げて、
全能の神様を表そうと試みた。
雨や雪や雷、空を縦横無尽に駆け巡る稲妻、
動物たちの営み、
海の様、山の様子。
それら一つ一つに、神様のお心が働いているのだ。
そうなのだ、神様は素晴らしい!
胸が熱くなって言葉が途切れた。
土ぼこりにまみれたほほに、何かがつたって落ちた。
語れば語るほど、神様の偉大さに圧倒され、
自分の内も外も、あらゆるものにかかわりを持たれるお方の
その御手の中にいる自分におののいた。
あ!!
突然、激しいつむじ風が沸き起こった。
エリフはよろよろと体をもてあそばれて、
赤い土ぼこりの中に倒れこんだ。