「わが父、わが父、イスラエルの戦車よ!その騎兵よ!」
目の前で、黒く細く渦巻いて、するすると昇って行く竜巻。先生(エリヤ)の乗った、真っ赤に燃える戦車。 🔥
それが、その先端にあった。
夢中で追いかけようと、走る私の頭上に、ふわりとマントが落ちてきて、視界をさえぎった。
そしてそれは、私の足に絡まった。👣私は顔から地面に突っ込んで転んだ。慌ててマントをむしり取った。
はて? (・・?
あたりは静けさに包まれ、今までの嵐の跡形もなかった。
見上げる空には、ねぐらへ急ぐ鳥たちの一群があるだけだった。🐤
手にしたマントは懐かしいエリヤ先生の物。まだ温もりさえ感じられるそれを、私は引き寄せた。私ははっきりと、天に上って行く先生を見た。🐎それは、まだこの瞼の底に焼き付いている。が、あの後、転んでしまって・・
私は不安になった。
先生の霊の二つ分を求めたが、果たして・・
あれから、自分の中に、何の変化も起こっていない。私はゆっくりと立ち上がった。枯れ葉や草の種が、その服に付着したが、気にならなかった。私はマントを広げてみた。
使い古したそれは、継ぎはぎが目立ち、汚れてもいた。
このマントで先生は、あの川の水を打ったのか。帰る道は先ほど来た道しかないと思った。
ぶるっと筋肉が委縮した。たぶん向こう岸には、預言者学校の仲間が、首を長くして待っているはずだ。☺☺☺☺☺
ざわざわと藪をかき分けて私は急いだ。
太陽の傾きが増したからだ。
こんなにも長い道のりを歩いたのかと、私は首をひねった。道に迷ったか?少し不安になりかけたとき、急に視界が開けた。ヨルダン川がその流れの色を濃くしながら、
そこにあった。岸に立つと、一瞬ぐらりと体が傾き、足元の土が崩れて足が濡れた。
「先生!!」
なぜか目頭が熱くなった。( ;∀;)
葦のざわつく向こう岸で、仲間が何か叫んでいた。手を振っている。✋ぴょんぴょんと跳ねている者もいる。🐸
マントをふっている者も。私は足元を確かめて、川岸に立った。
「マントだ!
マントで川の水を打つのだ!」
内なる力が私に迫ってきた。抱えていたマントを片手で持ってみた。
お、重い!
垂れ下がった裾が地面にふれた。私は、はっとして、両手でそれを持った。
「わが主、ヤーウェよ、
私にエリヤの二つの霊を授けられた主よ。今ここに、
その力を、私を通してお示しください!!」
両手でつかんだマントを頭上高く持ち上げると、私は叫んでいた。そうして右手を軸にして、後ろから前へ、流れる川面に力を込めて打ち付けた。
バサ!
鈍い音がした。と、手にしたマントが急に軽くなって、
私の元に戻ってきた。
おお!道が!
乾いた道が真っすぐに続いて、それは仲間の預言者たちの足元へと繋がっていった。彼らの驚きの声が返ってきた。☺☺☺☺☺☺私は走って仲間の元へ行きたかったが、この乾いた細い道の向こうには、幾多の困難が待ち受けていて、もはや、後戻りは許されないのだ。と知ると、踏みしめる一足一足が、乾いた砂底に、ズシリ、ズシリと重かった。
「 エリシャさ~ん!エリシャさ~ん!」
対岸が近づいて、仲間の歓喜の声の中に吸い込まれると、
もはや、そんな思いも消えていた。
「エリシャさん、先生はどうしたのですか?」
「竜巻が起こって、燃える戦車に乗って、🔥天に上って行かれました」
「え?!そんなことって・・待ってください。あの時、強風が吹き荒れていたのは、こちらからでも見えましたよ。竜巻ですか?だったら、強風にあおられて、山か谷に持って行かれたのかもしれませんね。よくあることです。どうか探しに行かせてください」
「いや、そういうことではないのだ。天に引き上げられたのだ。先生は、この地上には、もはやおられないのだ」
何度か彼らと話し合ったが、言葉はすれ違ったままだった。そのうち、疲れが急に覆いかぶさって来て、わたしは、早く休みたかった。そんな私は、彼らに言い寄られて、つい、首を立てに振ってしまった。
三日三晩、
預言者学校の屈強な若者50人が夜を徹して探し回ったようだったが、影も形も見いだせず、疲労困憊して戻ってきた。
そうなのだ。先生はもうこの地上にはおられないのだ。
そんなわけで、私はエリコの預言者学校に留まっていた。
そこにいる間、請われるままに、先生との離別体験を語った。そのことを語れば語るほどに、私の心の中で不思議さが増していった。
そして、先生の後継者としての自覚も、はっきりと見えてきた。先生は孤高の働き人だったが、私には仲間がいる。☺☺☺☺☺☺
先生のマントは今、私の手の届くところに置いてある。
たぶん私は、先生の使い慣れたマントを持ち歩くだろう。「主よ、私を通して、エリヤ先生の二倍の働きを、おし進めてください」
跪いて祈るエリシャの声は、低く長く続いて、預言者学校の夜は更けていった。🌙