ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

燃える炭火が‥・🔥 (イザヤ書1)

空は見事に晴れ渡っていた。

気持ちの良い風に乗って、

かわいらしい小鳥のさえずりが聞こえてきた。

 

そんな窓際に立って、

イザヤは大きなため息をついた。

妻である女預言者は夫を横目で見て、

そっと、ため息をついた。

あらあら、移ってしまったわ。

胸の内でつぶやくと、

小さな笑窪が彼女の頬に出来た。

彼女はすぐにそれを引っ込めて、

動かす手を速めた。

 

彼女は同業者として、

夫の働きを理解しているつもりだが、

それでも彼の深い心の内までは分からなかった。

分からないまま受け入れるのを良しとした。

 

イザヤは同じ姿勢のまま、また、ため息をついた。

イスラエルは、油注がれたダビデ王の側近が、

10部族を引き連れて建国したものだった。

それなのに、

エジプトの宗教と、

金の子牛礼拝を国教と定めて、

イスラエルの神を冒涜したのだった。

民も何のためらいもなく右に倣った。

それでも忍耐深い神は、

幾度となく無名の預言者や、

神の使いなどを派遣して、

危機から救い出したり、悔い改めを迫った。

エリヤやエリシャの他に、

いつもは南ユダで働いているヨナや、

イザヤも駆りだされた。

しかし民の行いは改まることなく、

終焉に向かって、

転がり落ちているのが現状だった。

幾度となくクーデターが繰り返され、

国王は交代し、国は疲弊していた。

帝国アッシリアの圧力も半端なくのしかかっていた。

私たちの働きが足りなかったのか?

無力さに胸がうずいた。

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イザヤの妻は目を覚ました。

夫がゆっくりと起き上がったからだ。

それは彼の習慣だったので、

彼女は再び眠りについた。

 

イザヤは外に出た。

まだ地上には夜明けの気配はなかったが、

満天の星の瞬きはうっすらと力を失っていた。

彼はいつもの祈りの場所へと急いだ。

家の裏側にある小さな丘で、

中腹の赤茶けた窪地が彼の定位置だった。

 

イザヤが膝まづいて、うずくまった時、

突然、幻を見せられた。

神様が天の御座に坐しておられ、

純白の輝く衣の裾が、

流れる川のように広がり、

神様の霊が、

朝露のようなみずみずしい美しさで満ちていた。

それは、

神様のご性質、

神様が神であることの存在感からあふれでくる、

たとえようのない輝きでした。

頭上にはセラフィムが舞い、

絶えず神様をたたえていた。

その姿は異形で、

それぞれ六つの翼を持ち、

一対は顔を覆い、

一対はゆっくりと動かして舞飛び、

一対はその足を覆っていた。

 

イザヤの体は震えていた。

   「私は、聖なるお方を見てしまった。

    この汚れた私は死ぬのだろうか?」

すると、

一人のセラフィムが、

赤々と燃える炭火を運んできて、

イザヤの唇に触れて言った。

 

   「さあ、あなたの罪は許された」

 

すると、イザヤの体から緊張が解け、

涙があふれた。

ああ今私は、神様のご栄光の中にいるのだ。

体の細胞の一つ一つが大きく伸びをして、

神様の霊が自分の体の中に

ゆっくりと流れ込んでくるのを感じて、

彼の心も体も歓喜に震えた。

すると神様が語られた。

 

   「誰が私の使者となって、

    民の所へ行ってくれるだろうか?」

 

   「はい、私をお使いください」

 

イザヤは即答した。

 

   「あなたが語るべき言葉はこうだ。

    何度私が語っても、

    奇跡の数々で救っても、

    あなた方(イスラエルの民)は私に気づかない。

    こうなったら、

    目を閉じ耳をふさぎ、理解力を鈍らせ、

    私の奇跡をやめよう。」

 

イザヤは寒気がして、ブルっと身を震わせた。

 

   「神様、いつまでそのことを語るのですか?」

 

   「国土が瓦礫の山となり、

    イスラエルの民が、

    捕囚となって連れ去られるまでだ。

    しかし民の十分の一は残そう。

    イスラエルの民は私が選んだ民だ。

    アブラハム、イサク、

    ヤコブと結んだ契約のゆえに、

    私はその民を絶やさない。」

 

イザヤの妻は、

いつもより遅く帰ってきた夫の姿に驚いた。

十歳も若返ったようにつややかな肌、

洗ったばかりのような清潔な衣。

 

   「まあ!」

 

彼女は驚き思わず叫んで、目を見張ったが、

理由を問わなかった。

神様にお会いしたんだ!

彼女の胸が躍った。 

 

しかし、

イザヤはその外観とは裏腹に、

心境は複雑だった。

喉にたまった澱を振り払うように、

コホンと小さな咳をして、

そっと自分の部屋のドアを閉めた。

 

夫が無言で持ち帰った小さな澱は、

たちまち彼女の高揚心を消し去った。

太陽の光が部屋の中に差し込んで、

目に見えなかった埃が舞い飛ぶのを、

彼女は無心に見つめ続けた。