アビメレクの死後、ドドの孫プワの子トラが23年間、ギレアデ人ヤイルは22年間、イスラエルを治めました。
ヤイルの死後、イスラエルの民はバアルとアシュタロテ、スリヤにシドン、モアブにアンモン、ペリシテなどの神々に走りました。カナン人が礼拝している全ての神々を取り入れたようです。
その結果、ギルアデのアモリ人の地に住むイスラエル人は、18年間も苦しみました。
それだけではありません。アンモン人がユダとベニヤミンとエフライムを攻めるため、ヨルダン川を渡ってきたから大変!もう限界です!
「私たちは罪を犯しました!!助けてください!」😿
イスラエルの民はすぐ、偶像を捨て去って叫びました。こういうのに神様は弱いんですねぇ。敵はギレアデ(ギルアデ)に陣を敷きました。それでイスラエルはミヅパに兵を集めました。でも有力な指揮官がいなかった。
「誰かいないか!」
「エフタがいるぞ!」
ということで、ギレアデの長老たちはエフタの住むトプの地へとやってきました。
彼が親族のもとを離れ、トプの荒野に住んだのには、訳がありました。彼の母親は遊女だったのです。本妻の子供たちが成長すると、親の財産分与から外すために、散々苛め抜いて彼を追いだしたのです。
それで、トプの荒野に身を置いたのですが、エフタの周りには自然と荒くれ者が集まってきました。気づけばエフタは彼らのまとめ役におさまっていました。エフタはここで略奪などを繰り返して生活していたのかもしれません。
「ならず者を指揮官にしていいのか?」
「いいもなにも、大将がいなければ軍は動けまい」
「エフタは悪ぶっているが、本当はいいやつだ。ただ、兄弟からのけ者にされ、腹をたてているだけだ。若いのに荒くれどもをうまくまとめている」
彼らは道々議論しながら、エフタのもとにやって来ました。
「お願いです。どうか我々を助けてください。敵はギレアデに陣をしきました。それで我々はミヅパに兵を集めたのですが、肝心の大将がいないのだ」
「ふん!さんざん俺を馬鹿にして追い出したのは誰だ。アンモン人が集結しただけで大騒ぎか?私が追い出されたとき、誰も助けてくれなかった」
苦い思いが込み上げてきた。
エフタは今までのうっ憤を吐き出すとさっぱりしたのか、
「戦に勝った暁にはギルアデの王になってくれ」と、
神かけて言われたからか、長老たちの願いを引き受けることにしました。
エフタは堂々として自信に満ちていました。
いや、弱みを見せたくなかった。兄弟たちから散々いじめられ、さげすまれて家を出たあの時、父ギルアデは自分を助けてくれなかった。心の中に沸き上がった淋しさ、やるせなさや怒りに、涙も出なかった。そんな思いが後押しとなって、今までの人生突っ張って生きて来た。いつかそんな奴らを見返してやるんだ。
それが、なんと、今、向こうから転がり込んできた。チャンスだ。エフタはそれに飛び乗った。むくむくと激しい野心が湧いてくるのがわかって、体が震えた。
ミヅパにつくとアンモンの王に使者を送った。
「なぜ我々を苦しめるのか?」
「昔、お前たちがエジプトから来て、我々の国を奪ったからだ」⚓
「奪っただと!それは誤解だ。我々はただ、カナンの地を目指していただけだった。その進路にエドムとモアブがあったのだ。我々の先祖は、それぞれの王に許可を求めたが、拒否された。それで両国の国境を進んだのだ。それから、アモリの王シホンにも通行許可を願い出た。王は激しく拒否したばかりか、我々に戦いを挑んできたのだ。自己防衛だ。結果、我らは戦ったのだ。なぜか?我々には全能の神様がついておられたので戦に勝ち、その土地を手に入れたのだ。あれから300年。その間、お前たちの神々は何をしていたのだ」*1
エフタは母の寝物語を思い出していた。イスラエルの勇士たちの輝かしい活躍に、いつも心が躍ったものだった。祈りを教えてくれたのも母だった。「やくざ者のエフタ」と言われているが、瞼の奥には優しい母の祈る姿が焼き付いている。
この戦に勝利したら、私は王になれる。自分を排斥した者たちにアット言わせることができる。ふつふつと闘志が湧き溢れてきた。エフタは、荒野で鍛えられたまなじりを天に向けて祈った。
勝った!
戦に勝利した!
祈りは聞かれたのだ。( ´艸`)
見ろ!
私は王だ!
王になったぞ!
張り裂けんばかりの喜びで胸は躍った。
真昼の太陽はエフタの頭上にあった。彼の姿を一目見ようと、沿道にあふれる人々に、満願んの笑みで答える彼の顔は、己の頭の影になって黒ずんで見えた。
ひと際歓声が高くなった。エフタの家が見えてきたからだ。娘に父親の勇士を見せてやりたい。娘盛りを控えた清楚で輝く愛娘の顔を、早く見たい。エフタの目が娘を探していた。