とんとん、とんとん・・・
何時になく忙しなく叩かれるドア。
ラハブはドキドキする胸を押さえて近づいた。
覗き穴から外を見て、急いでドアを開けた。
母が立っていた。
母親は吸い込まれるように部屋に入ると被り物をはずし
はあはあと、肩で荒い息をした。
ラハブは水の入ったコップを母に手渡すと
水は少しばかりコップからこぼれ、床を濡らし、吸い込まれて消えた。
コクン、コクン。何も言わずに水を飲み干した母親は口を開いた。
「来たよ!!
ヨルダン川を歩いているんだって・・」
「歩くって?ヨルダン川を?」
「水が干上がってさぁ
あいつらは、靴も濡らさずに川床を歩いているんだって・・
今、見張りの兵が走り回って騒いでいたんだ。
あんなに慌てている兵隊を見たことがないよ。
それでわたしも、急いで駆けてきたってわけ。
どっちにしても、この城壁が破られることはないよ。
町は狭いけど
分厚い2重の城壁がめぐらされているんだからね。
イスラエルの話が出てからは、
外壁(幅2m)も内壁(幅4m)も補強したし・・
一体城門をどうやって壊そうっていうのだい。
それでも不気味だよ。
川の水が止まってしまうなんて・・
皆殺しだよ (゚Д゚|||) il:i
あああ、どうしよう・・これでお終いだよぉ・・」
ラハブは母親の言葉を打ち消すように両の手で耳を押さえた。
「おお、これでお終いっていうの・・
いいえ、決して、決して・・これでお終いではないわ!!
母さん、わかっているでしょう。
この部屋にいさえすればいいのよ。
あのスパイの言葉にすがりましょうよ。
彼らを導く神は、
このエリコの神々よりもずっと素晴らしいんだわ・・」
ラハブは自分に言い聞かせるように言った。
この数日、親戚の家々を回り、
イスラエルが攻めてきたら自分の部屋に集まるようにと
説いて回ったけど、彼女自身、心が揺れていた。
「なんでも水は、25キロほど離れたアダムのあたりで
城壁のようにうず高く盛り上がっているんだって・・
見てきた人の話だと、
キラキラ輝いて光っているって・・
朝からず〜と、渡っているそうだよ。
一体、何人が川を渡って来るんだろう」
母親はブルッと身を震わせた。
「わたし、もう一度近くの親戚の所を回ってくるわ
お母さんはこの部屋に居てね・・」
ラハブは身支度を整えると、部屋を出た。
ラハブの家は城壁の上の家だった。
約10メートルほどの高さがあって
今ラハブは壁伝いに階段を走り降りていた。
子供の頃から慣れ親しんだ城壁は立派だと思った・・が、
泥のしっくいで接着したレンガは
母親や自分が思うほど丈夫でないかもしれないとも思った。
人目を気にして、昼間めったに外出したことのない彼女だったが、
今、そんなことにも気が回らずに
町の中へ駆け出した彼女を、
長く伸びた影がすがりつくようにして追った。
*
さて、時季外れですが、東京マラソンは毎年盛大におこなわれていますが・・
走者約3万人がスタートラインを超えるのに20分位かかるそうですが・・
イスラエルの人たちが川を渡り終えるのに何時間かかったのでしょうね?
2回目の人口調査のとき・60万1730人
プラス・・・・レビ人もいたし
・・・・子どもや、女性や、年寄りもいたわけだけど
あそうそう、家畜もいたんだよね・・
マイナス・・・ヨルダン川を渡らなかった人もいたし・・
エリコの町は3ヘクタール位の広さ・・ 甲子園が2個分くらいかな・・?
1400年後、新約の主人公は、この川の水を被ったとか・・
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