バビロンの地で、奴隷として数十年を過ごしたユダヤの民は、ようやく故郷エルサレムに帰ることを許されました。しかし、戻った彼らを待っていたのは、荒れ果てた廃墟と、かつて栄華を誇った神殿の無残な姿でした。

「さあ、神の神殿を建て直そう!」
最初は意気揚々と作業を始めたものの、周囲の国々からの嫌がらせや、日々の貧しい暮らしに追われ、工事はなんと10年以上もストップしてしまいます。民の心は冷え切り、「神は本当に私たちを愛しているのだろうか」という疑念が渦巻いていました。

そんな重苦しい空気の中、神の言葉を託された若い預言者が立ち上がります。
彼の名はゼカリヤ。
ある夜、神は彼に、眠りをも吹き飛ばすような「8つの不思議な幻」を一気に見せたのです。
ゼカリヤが夜の闇の中で目を凝らすと、次々と奇妙な光景が映し出されました。

ミルトスの木々の間に、赤い馬に乗った男が立っていました。彼の後ろには、茶色や白の馬たちが並んでいます。彼らは世界中をパトロールしてきた天使たちでした。
「世界はどこも静かで、平和に暮らしています」と天使は報告します。

しかし、神は言いました。
「世界がのんきに平穏を楽しんでいる間、私はエルサレムを激しく哀れんでいる。私はこの街に戻り、神殿を必ず再建させる!」

次に、イスラエルをめちゃくちゃに踏みにじった「4つの角(敵国)」が現れました。
絶望するゼカリヤの前に、今度は「4人の職人」が現れ、その恐ろしい角をハンマーで叩き割っていきました。
神を敵に回す勢力は、必ず滅ぼされるというサインです。

測り縄(メジャー)を持ってエルサレムの大きさを測ろうとする男がいました。すると別の天使が遮ります。
「測る必要はない! 未来のエルサレムは、人が多すぎて城壁に収まらないほど繁栄する。神である私が、火の城壁となってこの街を囲み、守るからだ!」

幻は、天上の法廷へと移ります。
大祭司ヨシュアが、泥まみれの汚い服を着て立っていました。その隣では、サタン(悪魔)が「こんな汚い奴が祭司なんて笑わせる、こいつらは罪びとだ!」と激しく責め立てています。
しかし、神はサタンを一喝しました。
「サタンよ、黙れ! この男は、燃える火の中から救い出された燃えさし(奇跡的に生き残った民)ではないか」。
神は天使たちに命じ、ヨシュアの汚れた服を脱がせ、最高に美しく清い礼服を着せました。神は人々の罪を赦したのです。

次にゼカリヤが見たのは、まばゆく輝く純金の灯台。その両脇には、枯れることのない油を注ぎ続ける「2本のオリーブの木」がありました。 これは、国のリーダーであるゼルバベルへのメッセージでした。

「権力によらず、能力によらず、ただ私の霊によって。」
どんなに資金がなくても、敵の邪魔が入っても、神の力があれば、神殿は必ず完成するという力強い励ましでした。
(※この後、ゼカリヤは「空を飛ぶ巨大な巻物」や「壺に閉じ込められた悪の化身」、「世界を駆ける4台の戦車」の幻を見、神が世界から悪を完全に一掃することを確信します。)

夜が明け、幻から覚めたゼカリヤの言葉は、民の心に火をつけました。人々は再びハンマーを握り、ついに神殿を完成させたのです。

しかし、ゼカリヤの預言はそこでは終わりませんでした。彼の視線は、はるか遠い未来の「究極の救い」へと向けられます。
「エルサレムの娘よ、大いに喜べ! 見よ、あなたの王があなたのところに来る。彼は正しく、救いがあり、へりくだって、ろばの子に乗ってやって来る。」
その王は、軍馬に乗って武力で支配する暴君ではありませんでした。平和を携え、人々の痛みに寄り添う王です。

しかし物語は、その王が「銀30枚」で裏切られ、突き刺されるという悲劇的な未来も予言します。それでも、最後にはその流された血が、すべての人の罪と汚れを洗い流す「泉」となるのだ、と。

ゼカリヤが語った物語は、絶望のどん底にいた人々に「神はあなた方を見捨てていない」という強烈な希望を与えました。
時が流れ、ゼカリヤが語った「ろばの子に乗った平和の王」は、新約聖書の時代にイエス・キリストという形で歴史に登場することになります。

ゼカリヤ書は、壊れた世界の中で「神の神殿(心の住まい)」を建て直そうとするすべての人に、今もこう語りかけています。
「恐れるな。あなたの手は、神の手によって強められているのだから」。(Gemini)
