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ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

寒椿

*

朝駆けに出かけた弟の 背を見つめるふきは24。

 父は天守閣の修理の折 怪我をし

 それが元で お城づとめが出来なくなった。

 

母が風邪をこじらせ 呆気無く死んだ 半年後のこと。

 それは弟8歳、ふき17歳の時だった。

 公傷の扱いをうけ、

 お扶持は減らされたものの 家族三人 何とか生きてきた。

 

 

さて 弟が帰ってきたようだ。

 彼は泥まみれだった。

 ふきが見咎めると

 不注意で転んだという。

 しかし 藩校や道場でいじめがあることを ふきは知っていた。

 

 

りくの心は急いていた。

 兄たちにくらべ あまり評判がよくない彦十郎が

 家中の尊敬を集めている藩医の推薦で

 来年から藩校の助教として出仕がきまった。

 りくはほっとした。

 それと同時に 嫁を迎えねば と思った。

 

 さて彦十郎が帰ってきたようだ・・

    「おや それはどうしたのです」

 りくは彦十郎の手にある 青磁色のお守り袋に目をやった。

    「いじめられていた少年を助けたのですが その子の落し物です」

 

りくは越後屋から届く 仕立物の裏地の中に

 その色が使われているのを知っていた。

 越後屋に問い合わせると すぐにふきのことが知れた。

 りくの心が動いた。

 

 ある日 りくは彦十郎を連れて円通寺に向った。

 椿の木の下で ふきが花をひろっていた。

 

   「このお守りは あなたがお作りになったものですね」

 

ふきは驚いて立ち上がり こくんとうなずいた。

 そばに若い武士が 目に笑みをためて立っている。

 弟を助けてくれたのは この方に違いないとふきは思った。。

 

    「これ彦十郎、椿の花をもっと落としなさい」

 

若い二人の姿をしばらく眺めていたりつは言った。

 

ふきはまだ 自分になにが起こったのか分からないまま

 

椿の花が乱れ落ちる中に立っていた。

 

 

 

 

                        澤田ふじ子著「花暦」寒椿

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