ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

正しい人は・・

不気味な地鳴りが聞こえる。

ハバククは身を震わせた。

カルデヤ人(バビロン)の侵入、その蛮行の数々が耳に入ってくる。

わが世の春を謳歌していたアッスリヤをも揺り動かす勢いだ。

虎視眈々とアッスリヤからの独立をもくろんでいるバビロン。

ユダ王国もバビロンを恐れていた。

預言者たちはバビロンを恐れるなと叫び続けた。

しかし、次々と入ってくる蛮行の数々に王も民も震えた。

王はヨシヤ王の後を継いだエホアハズ。アッスリヤの力が弱まったとき、彼がエジプトに助けを求めたとしても自然の流れだった。もう預言者の声は届かない。

エホアハズ王はエジプトから嫌われたのか、エジプトへ連れ去られて、そこで亡くなった。

後を任されたのはヨシヤの子エリアキム。しかし名前をエホヤキムと改名させられた傀儡王だった。

預言者エレミヤはあの手この手で、神様の御計画を伝えた。「バビロンに逆らうな」と叫び続けたが焼け石に水。それどころか、後には反バビロン派に、エジプトへ連れて行かれ、行方不明になってしまうのだ。

ハバククは目まぐるしく時代が変化してくる中で、一人、神様と対峙していた。

濃いひげが顔中を覆ていた。その奥の双眸は鋭く、ぎらぎらと光を放ち、一見、狂人のようにも見えた。着古したマントの裾はちぎれ、膝頭の辺りは穴が開いていた。

彼には不思議でならないことがあった。

「選民」と言う肩書の上に安心しきっている民。その民の生活は、その肩書とはほど遠いものがあった。律法は忘れ去られ、指導者は自分の欲望に従っていた。貧しい者はますます貧しくなり、富める者はさらなる搾取の方法を探していた。

神様はこのような民をいつまで放置されるのだろうか?

一人、祈り場で格闘するハバククは、「なぜ神様は、哀れな民を助けてくださらないのですか」と、呻いていた。

暑い、喉が渇く、水を・・・ぐらりと体が傾いた。

朦朧とする意識の中で渇望した神様のお声が聞こえてきた。

「私はこの民の罪を許さない。お前も知っているように、アッスリヤにかわってカルデヤ人を起こす。

彼らは世界を踏みにじり、国々をやすやすと征服してゆく」

ハバククは下げていた首をびくりとさせ、上半身を起こした。

そして、ずきずきする頭をもたげ、上ずった声で叫んだ。

「神様、ユダが罪深いことは重々わかっています。

王が偶像に首を下げていることもわかっています。あなたのお言葉を取次ぐ預言者の言葉など馬耳東風。略奪と暴虐で人々の心も生活も悲鳴を上げています。

あなたのおかげでアッスリヤの力がそがれ、カルデヤ人が世界の覇者になるのですか?

しかしそれでは、

選民の苦しみがアッスリヤからバビロンへと、鞍替えしただけではありませんか?

神様、あなたは私たちの悪を正すために、さらなる悪しきバビロンをおもちいになるのですか?彼らは暴虐と戦略にたけた偶像崇拝者です。そんな悪しき民によって、私たちは滅ばされるのでしょうか?」

ハバククの体が斜めに傾いて彼の意識は暗闇の中に沈んでいった。

次の日、ハバククは畑の中に点々とある見張り台に上った。

収穫期になると、どこからともなくやってくる略奪隊に備えて作られたものだ。

見張り台に立つと、心地よい風がふいてきた。その風に乗って神様の声が聞こえてきた。

「さあ、板に私の言葉を刻め。後の人々にも私の働きを知らせるのだ。

私の計画は必ずなる。遅くなることはあっても失望するな。悪人は必ず滅びる。しかし私に信頼する者は生きるのだ」

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口語訳には「災いなるかな・・」

リビング訳では「・・のろわれよ!」とバビロンを嘲笑しています。

「強盗ども。とうとう年貢の納め時だ。人を苦しめ、かすめたりした当然のむくいをうけろ!」

『不正な手段で富を得ながら、自分だけは災いから逃れようとしている。そういうおまえは、*****!」

『流血と強奪で得た財貨で、町を築き上げようとしている。そういうおまえは、*****!』

『まるで酔っぱらいをこずくように、近隣の国々をよろめかせ、その裸の姿を眺めて、楽しもうとしている。そういうおまえは、*****!』

『いのちのない木の偶像に救いを求める者も、もの言わぬ石に教えを請う者も、*****!』

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「ふ、ふ、ふ、ふっ。ははははは!(* ´艸`)

私たちの信じる神様は生きておられる。全地はその御前にひれ伏すのだ!」

久しぶりに腹をゆすぶって空を仰いで笑った。涙が込み上げてきた。

ハバククとは(喜び迎える)の意味。まさに今この時、彼は自分の名にふさわしい心境に至ったのだ。

いそいそと身を清めて宮に向かった。歩きながらも喜びの賛美が口をついて出て、その足取りは軽やかだった。

「ああ神様、あなたの御計画をお聞きしました。

どうぞ速やかに行われますように。

私は粛々とそれを受け止めます。

どうかその時には、か弱い民に哀れみを。

出エジプト、紅海で、またシナイ山での十戒。荒野での40年間をへて約束の地へ。

あなたはいつも私たちを見守り導かれました」

ハバククの口に、次々と新しい歌がわいきた。

『イチジクの木は花咲かず、

ブドウの木は実らず、

オリブの木の産は虚しくなり、

田畑は食物を生ぜず、

おりには羊が絶え、

牛舎には牛がいなくなる。

しかし、わたしは主によって喜ぶ。

主なる神はわたしの力であって、

わたしの足を雌じかの足のようにし、

わたしに高いところを歩ませられる』

そうだ、礼拝の折には、琴の音に合わせて、聖歌隊に歌わせよう。

ハバククの足捌きはますます早くなり、小走りになっていた。

「義人は信仰によって生きる!

 義人は信仰によって生きる!

ハレルヤ!主よ感謝します!』

あふれ出る賛美を口走りながらハバククは走った。

もっともっと早く、主のみ前に静まって賛美をしたい。

賛美をしたいのだ!

いつの間にか風が吹き荒れて砂塵が舞い上がっていた。その中をハバククはずんずんと進んでいた。