ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

エリザベツ、母となる・・


今朝がた早くに、妻エリザベツは母親になった。
男の子だった。

ザカリヤは、疲れ切って青ざめた妻の顔のそばで
皺だらけで赤い小さないきものが
同じように目を閉じているのを見た。

あれから何回この部屋に入り、そっと二人を見比べて
息を殺しながらゆるゆるとドアを閉めただろうか。

近くの親戚の女たちも数日前から泊まりこんでいて、
何くれとなく世話を焼いてくれたので、
彼は手持ちぶたさで
自分の部屋とこことを、往復している。

可愛いではないか。
握り締めた手の何と柔らかなことか。
顔の中央には、まだその位置も定かでないような鼻と穴
その下のプクリとした唇は、何かを求めて時おり動いていた。
地肌が丸見えの細い毛が、形の良い頭の上に申し分けなさそうに乗っていて、
妻の寝息がかかるたびにゆらゆら揺れている。

彼はまたも満足そうにうなずくと、自分の部屋の戸を背にして微笑んだ。

そんなふうにして、あっとゆう間に八日目の割礼の日は来た。
儀式は厳かに、先祖の手順にのっとっておこなわれた。
それからザカリヤは、
みんなの喧騒を逃れるようにして神様の前に額ずき、
感謝の祈りを捧げるのだった。

・・
儀式の痛みに泣き叫んでいた子は、
頬に涙の後を幾つもつけながら、
母親の乳首を口にしたまま、穏やかな寝息を立てている。

母エリザベツはそんな幼子をいとおしそうに見つめながら
静かにそっと胸を閉じた。

胎の子に絶えず語りかけながら過ごした日々と、
身を引きちぎられるような苦痛のはてに
この胸に抱き留めた命。
日ごとに力強く乳を求める子の
その力が増すごとに
噴き出してくるのは、戸惑うほどの母性愛だった。

   「ねえ、この子は長男だし、名前は「ザカリヤ」でしょ」

誰かが言った。
エリザベツはほつれた髪を掻き上げながら、声の方に顔を向けた。
   「いいえ、「ヨハネ」、「ヨハネ」よ」
   「ヨハネですって?私たちのご先祖様に、
    そんな名前の人がいたかしら?」

ザカリヤさんはどうなの、っと言ったゆうふうに、
筆記用具がザカリヤの手に渡ると、
ためらうことなく大きな字で「ヨハネ」と書いた。
エエッツ!と戸惑いと驚きの声が部屋を駆け巡った後

ザカリヤの喉はふるえ、突然、神を讃美し始めた。
声が戻ったのだ。

・・・

彼の話しによれば
祭司の務めをしている時、主の御使いが現れたのだそうだ。
すでに女の印の失せて久しい妻が男の子を産むという。
名は「ヨハネ」。
生まれる前から聖霊に満たされ、
将来、神様のために働く者となるという・・。
そうして自分は、
それを疑ったため声が出なくなったこと・・等等・・。

・・・・・

ザカリヤの話が終ると、親戚の者も近所の者も
一様に口実を設けて、そそくさと帰っていった。

そこで聞いた話しの端端に、今話題の事柄が含み隠されているのを
彼らは聞き漏らさなかった。
その話題とは「メシヤ到来」の事だった。

山間の地はあっとゆう間に、この話題で満ちた。

「汝らわが僕モーセの律法(おきて)をおぼえよ
すなわち 我がホレブにてイスラエル全體のために
彼に命ぜし法度(のり)と誡命(いましめ)をおぼゆべし
みよエホバの大(おおい)なる 畏るべき日の来(きた)るまえに
われ預言者エリヤを汝らにつかわさん
かれ父の心にその子女(こども)を慈(おも)わせ
子女の心に その父をおもはしめん
是は我が来きたりて
詛(のろい)をもて 地を撃つことなからんためなり」
               
               マラキ書4:4〜6

・・・
旧約聖書のマラキ書は
新約聖書の一番最初のマタイ福音書の前です。