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ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

王は死んだ。家に帰れ。

列王紀

その日、アラム王の武装は軽装だった。
周囲の兵士たちと然して変わらず、
ごく普通の戦車に乗っていた。
いつもはまがまがしく王の周りを取り囲むべき
親衛隊の姿も目に入らなかった。

   
   「目指すはアハブ王のみだ!!
    他の小者には構うな。」

それが敵陣を探ってきたスパイから聞いた言葉だった。

敵の目を欺く。ただそれだけのために、
ヨシャパテ王に立派な王服を着てもらい、
自分は質素な服を着て戦場に出ていたのでした。

いつもとは違う身軽な服装に、
つい隊から飛び出して、
気づけば回りは敵だらけ。

   「やばい! 引き返そう!!」

心の中でそう思ったとき、
胸に強い衝撃を受けた。

  目の前に突き出しているのは敵の矢ではないか!
  何だ、何でわしの、この胸に突き刺さっているのだ。

ジンジンと体が熱くなり、
思わずそこに手をやると、
どろりと生暖かいものが付いてきた。
その手を顔面に近づけると
鮮血に染まった指が目に飛び込んできて、
生臭い臭いが彼の鼻腔を刺激した。

戦車は敵の包囲網を掻い潜って
ようやっと、味方の陣の最後尾にたどり着き、
シリヤ軍をにらみ付けるようにして立つ
アハブ王の姿があった。

見れば、顔面蒼白で
痛みをこらえてかみ締める下唇からは、
うっすらと赤いものが滲んでいた。
彼の意識は朦朧としてきて、
鋼のような腕が、
両脇からがっしりと弛緩してゆく体を支えていた。

遠くで誰かが叫んでいる。

   「戦は終わったぞ〜。
    王は死んだ。
    みんな家に帰れ〜!」

アハブはかすかにそんな声を聞いたような気がした。
膝の力がガクリと抜けた。
静かだ、暗い、暗すぎる・・・。
司令塔を失った四肢がだらりと垂れ下がり、
彼の片足が血溜りの中で
妙な動きをしてピタリと止まった。


彼はユダの王ヨシャパテとワイン片手に、機嫌よく話しをしていた。
この三年ほどは、シリヤとの間も戦はなく、
ユダとイスラエルの関係も良好だった。

    平和が一番だ。
    戦が続くと民の心は疲弊し
    畑の収穫も落ちて、民衆の不満が募るものです。

    確かにそうだ。
    しかしやつらは、今もって、ラモテ・ギレアデを占領したままだ。
    あそこはわれらの土地だ。
    あそこを取り戻さなければ、枕を高くして眠ることもできない。
    あの町を奪いかえすために力を貸してはくれまいか。

    いいですとも喜んで。
    我々は兄弟ではありませんか。
    まずは、神様にどうすべきか伺ってみようではありませんか。
ヨシャパテの言葉にアハブは力ずけらられた。
彼はすぐに400人の預言者を集めて言った。

    われらがラモテ・ギレアデを奪還すべきか、否か、
    占ってもらいたい。

すると彼らは異口同音に言った。

    攻めなさい。神様があなたを助けてくださいます。
ヨシャパテはその言葉を聞いて違和感を覚えた。

        
    ここには真の神の預言者は居ないのですか?
    その者の言葉も聞いてみたいのですが。

アハブ王は少し声を落として言った。

    一人だけ、いることは居るのですが、
    あいつは駄目です。
    融通が利きません。
    どうも虫が好かないのです。

    まあまあ、そんなことを言わずに・・
ヨシャパテの言葉に、気乗りしないアハブ王でしたが、
そばに控えていた家来に、
その預言者を呼んでくるようにと命令しました。

彼の名は「ミカヤ」。

二人の王は町の門に近い脱穀所で
即席の玉座に並んで座っていた。
その前に立つ預言者たちから
次々と言葉が飛び出していました。
ある者は、手にした鉄の角を高々と掲げて言いました。

   この角で敵を突けば、
    全滅間違いなし

別の預言者たちも、
アハブ王の気持ちに沿った言葉を口にしていました。

   ミカヤさん、
   他の預言者の皆さんはあのとうりです。
   客人が来ていることだし、
   みんなに合わせてくださいよ。

王の家来はそっとミカヤに耳打ちして
彼を玉座の前へと導きました。