北イスラエル第18代の王ぺカの治世のことです。北王国はユダ王国に攻め入って大勝利を治めました。
それはユダ王国第12代目の王アハズの治世でした。ヨアシュ王、アマツヤ王、ウジヤ王、そして彼の父であるヨタム王は善政を布き、約130年以上も国は安定していました。
ところが、父の後を引き継いだ二十歳のアハズ王は違いました。彼はバアル像を造り、ベンヒンノムの谷では香を焚き、自分の王子を犠牲として捧げました。他にも好き勝手なことを繰り返していました。これはご先祖ダビデ王様の教え、ひいては神様の教えに背くことでした。
そこにスリヤ軍が攻めてきました。そして沢山の捕虜をダマスコに連れ去りました。
その後、ぺカ王も攻め込んで来ましたからたまりません。
弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂。
一日にユダの勇士12万人が殺されました。その時大活躍したのは、エフライムの勇士ジクリでした。アハブ王の子マアセヤ、宮内長官アズリカム、王の補佐官エルカナも彼の手に掛かって亡くなりました。
それから、分捕り品と20万人の捕虜を連れて彼らは意気揚々と帰国しました。
しかし、それをサマリヤで怒り心頭に発するという顔で、待ち構えていた人がいました。
預言者オデデです。
王を先頭に凱歌を上げ、意気揚々と引き上げてきた人たちに言いました。
「これは警告だ!神の怒りがお前たちの上に注がれようとしている!!」
「ええ!?」
喜色満願の王の眉毛がピクリと動きました。
さっと兵士たちが動いてオデデを取り囲みました。
しばらくして、オデデは玉座に座るぺカ王の前に引きずられるように連れてこられました。オデデは自分を拘束する荒々しい手に背中を押されてよろめきました。
オデデの顔は憤怒で真っ赤になり、その眼差しは鋭くあたりを睨みつけました。
ぺカ王はそんなオデデに話すように促しました。
「王様、今回の戦をどう思われますか。ユダはあっさりと負けました。それはあなたの前にシリヤ軍が押し入って、大損害を与えていたからです。あなたはこれ幸いと押しいったのではありませんか?
よく聞きなさい。シリヤ軍を手引きしたのは神様です。
アハズ王は偶像にまみれていたので、神様は敵の手に渡されたのです。その弱みに付け込んで、アハズ王の周りの有力者を殺し、20万もの婦女子を捕虜として連れてきたのは何のためですか?奴隷として使い売りさばくためではないのですか?
これはやりすぎだ。もとをただせばユダとは親戚ではないか。
畏れよ!神の前に遜れ!神様の怒りが我らに向かわれているぞ!!」
オデデの腹の底から絞り出した声はあたりにこだまして響いた。
言うべきことを言ってしまうと、彼は衣を翻して王の前を離れました。
それを見届けると、すぐ四人の指導者がぺカ王の前に頭を揃えました。
「これは大変なことだ。まずは裸の者に衣服を与え、はだしの者には履物を与えよう。それから食べ物を与えて休ませよう」
彼らは沢山ある戦利品の中を物色して必要な物を賄いました。
それから体の弱った人たちをロバに乗せ、ナツメヤシの町エリコまで護送しました。
エリコの町の人たちは驚き喜びに沸きました。
こんなことがあったのに、それからもユダはエドム軍の侵略でたくさんの捕虜が連れ出されました。ペリシテ人も侵略してきました。
アハズ王は自分の不信仰に気づくこともなく、アッスリヤに援助を求めました。結果は散々でした。息子ヒゼキヤが父のほころびを正そうと奮闘しましたが、時すでに遅し。南王国も零落の時代へと突き進んで行き、北王国は滅亡の淵に立たされていました。
預言者オデデの出現はそんな時代のちょっといい出来事でした。