ギルガルからべテル。
べテルからエリコへと神様は私を導かれた。
しかしそれは、
私自身の望みだったような気がするし、エリシャの為でもあったのではないか,とも思う。(・・?
ギルガルからべテル。
べテルからエリコへと神様は私を導かれた。
しかしそれは、
私自身の望みだったような気がするし、エリシャの為でもあったのではないか,とも思う。(・・?
エリヤさんはこのところ超多忙。
預言者学校の引継ぎ、
預言者仲間にエリシャの紹介。
その合間に色々な人からの相談やら何やらで、
寝る間もないほどです。🐤ぴよ!
久しぶりに暇ができて、私は窓辺に置かれた、古びた小さなテーブルの前の椅子に腰かけた。涼やかな風が私の気持ちをほぐしていく。
それにしても、エリシャはよくついてくるものだ。いつ根を上げるかと思っていたが、最近は目つきが変わって来たなぁ。
「神様、感謝します。」
瞼が急に重くなってきた。💤ギルガル、それが私の生まれ故郷だ。その昔、モーセの後を継いだヨシュアの一行は、ヨルダン川をはさんで、目の前に広がる約束の地を見た。すでに贈与の地は支族ごとに決まっていた。
しかし、私の先祖は、神から賜るはずだった約束の地を蹴ったのだ。
理由は、家畜に適した地、ギルガルが気にいったからだ。(⋈◍>◡<◍)。✧♡
麗しい地ではあったが、同族とは川で隔てられた。そのため、常に周辺諸国の脅威にさらされることになり、イスラエルの心配の種ともなった。そんな不信仰の支族にもかかわらず、神様は私を心にかけて下さり、預言者としての訓練を、荒野でうけさせてくださった。厳しかった。
だが、先祖の汚名返上のため、全力で主にお仕えしようと、若かった私は誓い、苦しい訓練にも耐え抜いたのだ。
そんな訓練を私が積んでいたころ、イスラエルの王アハブは、バアル、アシュラ信仰の盛んな地から、妻をめとった。名はイゼベルといった。
結婚と共に偶像も持ち込み、王は積極的に宮を建て、祭壇を築いた。
これに神様は怒られたのだ。
私が、荒野から王のもとに遣わされ、神の怒りがどんなに激しいかを、3年6か月もの異常気象で示したのだ。
その時、私はケリテ川で鳥に養われ、川が枯れると、べテルへと導かれた。
べテル?
イゼベルの出身地ではないか!バアル、アシュラ礼拝の本拠地ではないか!その地も神の怒りに干上がっていて、
緑のかけた世界が広がっていた。
そこに、やせ細った寡婦とその子供がいて、彼らを助けた。
そして、私は3年も、やもめの家に滞在した。🏠
私はアハブ王の元へ遣わされた。👣
イスラエルがとんでもないことになっていたのだ。
イゼベルはバアルの預言者450人を養い、次々と真の神の預言者を迫害していた。それを聞いて、👂 見て、👀
私の心に沸々と怒りが込み上げてきた。(# ゚Д゚)
私の後ろには、常に真の神様の存在があったので、私は王の前でも恐れはなく、大胆に語ることができた。
「カルメル山で対決だ!どちらの神が雨を降らせるか!」☂
バアルの預言者450人対、私一人でだ。
そして、それは私エリヤの劇的な勝利で終わった。
それを知った民衆は、狂喜乱舞した。その勢いに乗って、ずぶ濡れの中、バアルの預言者たちを倒したのだった。
しかし、それを知ったイゼベルの言葉に、私は臆した。
「エリヤを殺せ!その仲間もだ!」
疲れ果てた私に、その言葉は稲妻よりも恐ろしく、胃が痙攣を起こしたほどだった。あれほどまでに強烈に、神様の力をこの身を通して表してくださったのに、あの時、私はどうしたというのだろうか。
勝利の言葉に舞い上がり、己の力でしたかのように錯覚してしまったのか。
今、思い起こしても身震いがする。
40日40夜の長旅。
それは、ただ、ただ、神様の哀れみだった。
強行のはずなのに、私はあまり覚えていないのだ。ただ何者かに引きずられるようにして、歩いていたように思うのだ。(・・?疲れて倒れそうになる私を、
そうだ!確かに!
温もりのある逞しい腕を・・ああ、はっきり思い出せない!!💦
気付けば、偉大なモーセが十戒を頂いた、ホレブ山の山頂近くの洞穴の中にいて、激しい落雷と風の音に目が覚めたのだ。
嵐の中であの方の声が聞こえて、慌てて入り口近くまで這いだすと、
「お前はなにをしているのか?」
と言われた。
「イゼベルが報復として、あなた様の預言者を全滅させ、私一人が逃れて、ここにいます」
と私が言うと、
「ハザエル、エヒウ、エリシャの他にも7000人もいるではないか」
と神様は言われた。
その言葉に私はハッとして、泣いた。( ;∀;)
孤軍奮闘だと思っていたのは自分の傲慢だった。私の気負った心がすっと無くなった。
エリヤの首が、かくんと揺れて、目の前の小さなテーブルに倒れ込んだ。
今やアハブ王は戦死し、息子アハジヤが王となった。その彼も亡くなり、弟のヨラムが王となった。オムリ王朝の終焉は近い。
一陣の風が、小さな窓の戸をカタカタと鳴らした。
「うっ」
私は体をもたげ、コリコリと首を回した。寝ていたのか。夢を見ていたのか。両手のこぶしを上にあげながら、
腹の底からこみあげてくるものを、椅子の背に背骨をゴリゴリ押し付けながら、💺
「ゥ、う~ん」
と吐き出すと、心配そうなエリシャの顔が窓越しにあって、目が合った。👀
私は言った。
「主が私をべテルに遣わされた。お前はここに留まっていなさい」
突然の私の言葉に、エリシャの顔が真っ赤になって、窓枠にかぶりついてきた。
風が吹いて、エリシャの荒い息遣いが耳元に届いた。
私はそれで満足した。
わぁ~い!エリヤさん、見っけ!ピョ!👀ずっと探してたんですからぁ~~。。後継者を見つけてから、どこに行ってしまったの?って思っていたら、ギルガルの、預言者集団の中に紛れていたんですね。
エリヤさんは真の神様の預言者学校を、あちらこちらに作っていて、国中を駆け回っていたみたいです。アハブの目を盗んで。
もちろん、エリシャも金魚のあれみたいにくっついてね。
前回で、列王記上は終わりですが、最後の章に、ササっとまとめが記されていました。イスラエルの新王は息子のアハジヤが継ぎ、彼はなんの違和感もなく、偶像信仰もそっくり受け継ぎました。
その間戦場で命乞いをしたヨシャパテ王は無事帰国。彼は、亡き父アサ王のなしえなかった、神殿男娼を追っ払いました。
それでも、高き所にある偶像を取り除くまでには至りませんでした。悪しき習慣は、民の間に根強く浸透していたということの証でしょうか。
そして、偶像礼拝に染まっている、イスラエルとの関係には慎重になりました。
列王記下の1章からエリヤさんが登場ですが、
あれ?大急ぎで山道を歩いています。
神様からのお告げがあって、アハジヤ王の使者がこの道を通るらしいですよ。あ、見えてきました。
エリヤは足を止め、彼らが来るのを待っています。
エリヤの姿は異様ですね。のびた髪の毛と髭が顔の大半を覆っていて、澄んだ瞳が深い沼のように沈んで見えます。
使者はちらりとその男を見て、通り過ぎようとしましたが、エリヤさんは道を譲りません。
はて?っといぶかしげに男を見る彼らに、エリヤさんは唐突に言いました。
「さあ、帰ってアハジヤ王に伝えるのだ。
『どうしてわざわざ、エクロンの神バアル・ゼブブに、お伺いをたてに行くのだ?イスラエルには、お伺いを立てる神はいないのか?』とな」
使者がのけぞっています。何か言い返そうとしていますが、口がパクパク動くだけで、言葉になっていません。
そして、操り人形のようにゆらりと体が揺れて、王のいる宮殿に帰って行きました。
「なに?!使者が戻ってきた?早すぎる。どうした?」
「実は王様、途中で異様な姿の男に会いまして、あなた様に伝えるようにと言葉を貰いました。」
アハジヤ王は、その男の特徴を聞いてピンときました。
「それは預言者エリヤだ。父が彼に会うといつも不機嫌になったものだ。それで何と言われたのだ。」
王は痛みに顔をしかめながら言いました。
しかし、使者はうつむいたままです。
「どうした、なんと言われたのだ。」
「あ、はい、『エクロンの神バアル・ゼブブに、お伺いをたてに行くのだな。イスラエルにはお伺いを立てる神はいないのか』と大声で言い放ちました。
それからとんでもないことに、あなた様の怪我は治らず、
ベットから起き上がることのないまま・・」
「なんだ。」
「はい、その・・」😥
「わしが助からないとぬかしたか。ううっつ!大きな声を出すと、胸に響く。天井を見たまま首も動かせぬ。エ、エリヤを捕まえて来い!」
王の指示で
50人の兵士と隊長がエリヤ捕縛に向かいました。エリヤは丘の上の切り株に腰を下ろしていました。
「王様の命令だ。預言者エリヤよ!我らと一緒に山を下りるのだ。」(# ゚Д゚)
隊長は兵士たちに号令をかけました。
「私を捕まえようというのか、私が神の人であるなら、天から火が下って、お前たちを焼き尽くすぞ!」
兵隊たちがその言葉に、二の足を踏むのに、隊長はさらに声を張り上げて命令しました。
あ!
隊長の延ばした腕の先がピカっと光り、隊長と兵士たちが炎の中に倒れました。生き延びた一人が息せき切って宮殿に駆け戻り、事の次第を告げると息絶えました。
「ゆけ!捕まえて来い!」
再び王の命がだされて、50人の兵と隊長が、顔を強張らせてエリヤのもとに駆け付けました。あたりには異様な臭いが漂っています。何ということでしょう。
二度目の部隊も、一度目の部隊と同様な目に会い、再び、三度目の部隊がエリヤのもとに行かされました。三度目の隊長はエリヤの前にひざまずいて言いました。
「真の神の人よ。どうか我らを焼き尽くさないでください。」m(__)m
するとエリヤの耳元でささやく声がありました。
「彼と共に下りなさい。」✨
宮殿につき、アハジヤの病室に入ると、エリヤは憐れむように王を見つめながら、神の言葉を伝えました。
それから間もなくです、王はベットから立ち上がることなく、息を引き取りました。
王には子がいなかったので、弟ヨラムが、イスラエル9代目の王となりました。
さあいよいよ、エリヤとエリシャ再登場。
次回、楽しみだわぁ~~。*1
*1:´∀`*
バシ!バシ!!
一瞬、目の前が真っ白になった。よろけた足が、衣の裾を踏んだ。。地面にぶち当たった体が痛かった。
両頬がヒリヒリと熱くなった。ヌメっとしたものが口中にひろがった。唇の端を手の甲で拭うと、鮮血!
一人の預言者の思いがけない行動に、その場にいた誰もが息をのんだ。 (ノ・ω・)オオ!
ケナアナの子ゼデキヤ。
その彼が、私(ミカヤ)の頬をびんたしたのだ。
彼は横たわる私を睨みつけ、上ずった声で言った。
「どうしてわかる。わたしの預言がウソだと、どうして言えるのだ!」
私(ミカヤ)はゆっくりと上体を起こし、両手で体を支えながら立ち上がった。そして、ゼデキヤに言った。
「あなたが身を隠すとき、そのことがわかるでしょう。」
突然、王アハブは家来たちに言った。
「ええい!ミカヤを捕まえろ。(# ゚Д゚)そいつを町のつかさアモンと、王子ヨアシの元へ連れて行け!!牢にぶち込んで、死なない程度に痛めつけておけ。わしが帰って来てからどうしようか・・」
私はふっと、口の端を歪めて笑ってしまった。
「王よ。あなたが凱旋なさる時、私は偽預言者の仲間入りです。無事のお帰りを」
話の途中で、右手をグイっとつかまれ、両手を拘束された。
「皆さん!!今日の、このことを覚えておきなさい。私は玉座におられるお方を見たのだ!!👀これは神様の業ですぞ。
神様はこう言われたのだ。『アハブを戦死させる方法はないか』と。すると一人の御使いが言ったのだ。
『私にお任せください。王のお気に入りの預言者たちに、王をそそのかせましょう』と。」
そう言うと、私は王の前から引きずり出された。
不自然に身をねじって、最後の言葉を言おうとしたとき、
またしても誰かが、私の頬を叩いた。
アハブ王の元から使者が来たとき、
私はすでに着替えをし、使者の足音が近づくのを待っていた。朝の祈りの中で私は幻を見せられ、アハブ王の戦死を告げられたばかりだった。
使者は言った。
「王様は念願だったラモテ・ギルアデを奪還したいと願っておられる。今、400人の預言者が宮殿に集められて、王様を励ます預言をしているのだ。ミカヤさん、あなたも王様を力づける預言をお願いします。
今日はユダの王様も来ていて、その王様のたっての願いで、あなたは呼ばれたのだ。口を慎んでください。」
使者はくどくどと言い募った。
どうやらヨシャパテ王は、アハブ王の命で招集されたらしい。ダビデ、ソロモンと続いた王家は、孫の代でユダとイスラエルに分かれた。ユダはダビデの直系だが、今はイスラエルの属国も同様になっていた。だからアハブの命には背けないのだ。
スリヤとイスラエルの間には、三年間、戦争がなかった。
その間、ラモテ・ギルアデはスリヤにおさえられていた。
そこはヨルダン川の東にあって、ソロモン王在位の時から、イスラエル領の重要な町の一つだった。
それは、ダマスコ(アラム)との国境にあったからだ。
6代目のアハブの父オリムは、元軍司令官だったが、二つのクーデターを制して王となった強者だ。彼はサマリヤに首都を構えたが、そこは多民族の地で偶像に満ちていた。
オリムの息子アハブは父に見習って、さらに国を豊かにした。信仰も父にならった。
父の代にはユダはアラムと同盟を結んでいたが、息子ヨシャパテはアラムとの縁を切り、イスラエルと同盟を結んでいる。この機を逃すわけにはいかないと、アハブは考えたのだろう。それを煽るように、取り巻きの預言者は言葉をつなげているのだ。
使者に伴われたミカやは、玉座に座るアハブの前に立った。挨拶をしようと腰をかがめると、頭上でアハブの声がした。
「待ちくたびれたぞ。ラモテ・ギルアデを取り戻したいのだ。私に勝算はあるのか?ないのか?」
ミカヤは少し首を傾げ、もったいぶって言った。
「王様、御出陣なさいませ。勝利はあなた様のものです。ここにおられる預言者の言われる通りです。」
おお~。
抑え気味のどよめきが広場に広がった。アハブ王は目を丸くし、肘掛イスをいまいまし気に叩いた。
「それが神の言葉だと!?ミカヤ、本当のことを言え!」
私は王の言葉に飛びついた。
「実は王様。幻を見ました。牧者を失ったイスラエルの民が、山の中でさまよっていました。」
その時だった、
ケナアナの子ゼデキヤが、私の目の前に大股でやって来て、私の頬をびんたしたのは。
私は薄暗い牢屋に閉じ込められ、命をつなぐための最低限の水と食べ物を与えられて過ごしたが、私の肌はつややかで血色もよく、眼力も衰えなかった。
どのくらい日数が過ぎたのか、私にはわからなかった。
それは、陽が沈んで明かりが必要になった頃だった。
バタバタと足音がして、いつもの牢屋番が慌ててやって来た。彼は、ガチャガチャと牢屋のカギを外しかけたが、手が震えてうまくいかないようだった。
私は思った。アハブが戦死したな。
「どうしたのです。そんなに慌てて」
「アハブ王様が亡くなったのです。流れ矢に当たって・・
それで今、国中が騒いでいます。預言者様、どうぞ牢屋から出てください。あなたのお世話をしながら分かったのです。あなたこそ真の預言者だと」
牢屋番は私を牢屋から出すと、あたふたと闇の中に消えて行った。久しぶりに外の空気を吸った。ここは町から少し離れていて、町の喧騒は伝わってこなかった。目の前に大きな木があった。星々がきらめくのを認め、私は根方に座って、目を閉じた。
王様、あなた様は、私の預言を信じておられたのでしょうか?王服をヨシャパテ王に着せ、ご自分は兵士の格好をして、戦車に乗られたのですね。敵が、ご自分を狙ってくると、分かっておられたのでしょうか。
王服に身を包んだヨシャパテ王が、スリヤ兵に囲まれた時、あなたはこれ幸いと逃げ出したのですね。でも、それがよくなかったと思いませんか。王を守るべき兵士が、王を残し、敵に背を向けて逃げ出すものでしょうか。
名もない兵士であっても、訓練された者は、逃げる者に反射的に矢を射るもの・・・身を鎧で固めていたのに、わずかな胸板と草摺りの隙間から、矢が・・
結局、神様のご計画からは、逃れられないのですね。王様の乗った戦車には血だまりができて、その臭いに誘われて野犬がやって来たとか。
王様、ナボテの葡萄畑の件で、エリヤから言われたことを覚えておられましたか。アハブ家は滅びると。それも最後は野犬がかかわることを。
恐ろしいことです。あなた様が建てた象牙の家、あれはどうなるのでしょう。
私があなた様にいつも申し上げていたことが、真実であるがゆえに、あなた様は避けておられた。あなた様は真の神様を知っておられた。
それなのに・・選ぶべき道は他になかったのでしょうか?
頭上の木の葉が騒めき出した。眼下の町の灯はチカチカと瞬き、消える様子がなかった。
新しい王が誕生するのだ。
えっ、
神様はあの男を許されるのですか?エリヤは神様の懐の深さに感動し、カァーと丹田が熱くなった。
異教の妻の言いなりになり、偶像に染まり切ったどうしょうもない男。その男が今、見栄も誇りも打ち捨て、着物を引き裂き、ぼろを身にまとっていた。食を断っていた。
焦燥しきって、髪も髭もぼさぼさだ。落ち窪んだ目の周りに出来た大きな隈。不眠に悩まされている証拠だ。
これが数日前に会ったあの男か?
エリヤは目を疑った。
男の名はアハブ。イスラエルのれっきとした王である。
数日前、
エリヤは神の言葉を携えて王のもとを訪ねた。エリヤがアハブ王に会う時はいつも、神の言葉を携えていた。それも、彼を不機嫌にさせる言葉をだ。
そのため、王は極力彼に会うのを避けていた。それでも、神の預言者としての務めを果たすべく、エリヤを追い払おうとする家来たちを払いのけて、強引に王の前に立つのが常だった。
あの時もそうだった。
宮殿の中の部屋々を回りながら、主に導かれて、王のいる部屋へと踏み込んだ。アハブは憎々しげにエリヤを見、
体中から拒否反応を発散させながら言った。
「なんだ、またお前か。許可なく、ずかずかと入り込んでくるとは、いい度胸だ。今日は何だ。」
エリヤは大きく息を吸った。
そして目を閉じ、神からの言葉を整えた。神からの言葉は強烈で、エリヤが初め聞いたとき、体が押し倒されるような衝撃を受けた。エリヤはまた深呼吸をし、アハブを見つめた。
アハブは足を広げて、肘掛椅子に深々と腰かけ、ふんぞり返り、王としての威厳を保とうと、エリヤを睨みつけていた。そんな彼にエリヤは言った。
「エズレル人ナボテの葡萄畑を奪ったな。畑だけでなくその命まで奪ったな」
アハブ王は微かに口角を引き上げた。
「宮殿に隣接するあの土地は日当たりもいいし、菜園畑にぴったりだと常々思っていた。わしは通常の倍の代金を払い、代替え地をも用意すると言った。なのに、あいつはけんもほろろに断った。くさくさしていたら、イゼベルがうまくやってくれたのだ。わしはどんな方法でやったかなんて、知らない」
「知らないですと。異教の妻イゼベルに話せば何とかなると、あなたは知っていた。そうやって、いつも自分を甘やかしてきた。そのつけは大きいですぞ。」
エリヤはアハブを射殺すように見つめた。
「アハブよ、聞くがよい。神はこう言われた。
『私はあなたに災いをもたらす。アハブ家に属する者は容赦なく滅ぼし、イスラエルからお前の家系を断つ。お前も妻イゼベルも、獣に食われて死ぬ。町中で死ぬアハブ家の者は獣に食われ、野で息絶える者は空の鳥の餌食となる』」
エリヤは一気に言葉を吐き出した。
このような言葉をいつまでも心にとどめていると、自分自身の体がむしばまれてゆくような気が、いつもしていた。
アハブは額に青筋を立て、肘掛の先をがっしりと掴み、顔を突き出し、叫んだ。
「いつもいつも、そうやってわしを怒らせる。
アハブ家が滅びるだと。ぬかせ!イゼベルは異教の国とを結ぶ要だ。そのおかげで、幾度、戦を避けられたと思っているのだ。
イスラエルの神だけに仕えよだと。笑止、笑止。それこそ頑なな心とゆうものよ。互いに理解しあい、相手を受け入れてこそ、平和が保てるというものだ。
お前はわしの預言者たちを偽者呼ばわりするが、融通の利かないお前など要はない。帰れ、帰れ!お前の顔など見たくもないわ!
これ以上ここにいたら、命は無いものと思え!」
王は怒りで震える腕を伸ばし、エリヤを指さしながら叫んでいた。エリヤは自分の背中越しにその言葉を聞いた。
足早に屋外に出ると、雲足が強まっていて、太陽を覆っていた。
時には、自分の勤めの重さに疲弊するエリヤ。
しかし、イスラエルの民を偶像の餌食には出来ない。真の神を見失ってほしくない。自分はそのために遣わされているのだ。神の言葉の代弁者として、人に憎まれ、命を狙われようと、悔いはない。そんな思いが弱気になる彼を奮い立たせ、さらなる働きの原動力となった。
主よ、お守りください。
エリヤは天を仰いで歩きだした。
エリヤの姿が扉の向こうに消えて、アハブは腕を下ろした。体中の力が抜けて、イスの中に体がのめり込んでゆくように感じた。重い。不意に瞼が下りてきた。ずずーっと、冷や汗が背中をつたった。指先が冷えてきた。
再びエリヤの言葉が響く。アハブに向かって、チロチロと赤い炎が這い上ってきた。
わぁぁぁぁあ~~!
アハブはのけぞって悲鳴を上げた。 巨大な目玉が迫ってきたのだ!目が開いた。心配そうにのぞき込むイザベラと目が合った。彼はベットに横になっていた。
「また、あの預言者が来たのですね。アハブ家が滅びるなんてありえません。あなたはイスラエルの王様。恐れるものなど無いのです。ちょうど、礼拝に行くところでしたから、私の神様にお祈りをささげてきますわ」
イザベラは真っ赤に紅を差した唇を、アハブの耳元に近づけて言った。
静かだ。
アハブはほっとしながら、広い寝室の天井を見つめた。そこには池の水が反射して、柔らかな光が揺れていた。葉連れの音がせわしなくなってきて、不意に、窓辺のカーテンを舞い上がらせた。
わぁ!
アハブの体がわなわなと震えだし、がくがくと操り人形のように、不器用に体を動かして、芋虫のように体を丸めた。
すると、大きな手で首根っこを押さえつけられ、誰かに引きずり出されるようにして、ベッドからずり落ちた。
彼は放心していた。見開いた眼は、焦点が定まらず、だらしなく開いた唇はカサカサになっていた。アハブは突然、ビリビリと衣を裂いた。髪をかき回し、髭を引っぱった。
「 ゆ、ゆるしてくれ、エリヤ!幼いころは真の神を敬い、父オムリのようになるまいと、気負っていた。それが今はこのざまだ。
妻の機嫌を取らなければと、必死だ。甘やかされて育ったことはわかっている。何もかも人任せになってしまった。
まわりの者が忖度してくれるからな。ナボテには悪いことをした。
だからといって、獣に食い殺されたくはない!エリヤよ、教えてくれ!わしはどうしたらいいのだ」
アハブは幼子のように声を出して泣いた。
それから幾日が経過しただろうか。
エリヤがまた、アハブのもとへやって来た。
アハブはふらつく体を、イスに縛り付けるようにして座った。声を出すことも億劫で、エリヤの足元を見つめていた。預言者の衣の裾は土にまみれ、擦り切れていた。
「神様の哀れみだ」
突然エリヤの声がした。
「アハブよ、お前は獣に殺されることはない。お前の悔いる心を神はよみされた。裁きは延ばされたのだ」
その言葉にアハブはびくっと反応し、勢いよく背筋を伸ばした。それから口をパクパクさせ、慌てて手で押えた。見開かれた眼の中で黒目が大きく揺れて、彼は、膝に顔をうずめてただ泣いた。
わぉ~~!
神様は素晴らしい!
でも、命をとられちゃったナボテは・・・( ;∀;)アハブを、このまま生かしていていいのでしょうか?罪を憎んで人を憎まず・・むずかしい‥‥アハブさん、あんたは楽して、そのつけを子孫に押し付けて、それで何とも思わないのかぁ・・・なぁ~んて、思ってしまう。🐤はやっぱり🐤だなぁ・・・・