読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ピヨピヨひよこ日記

自分流に聖書を読んでいます。

聖書を自分流で読んでいます。

ああ!わが子アブサロムよ!!

サムエル記

ホシャイはあたりを気にしながら、祭司ザドクとアビヤタルのもとに急いだ。
自分の意見が通ったとはいえ、
いつ何時、追っ手が来るとも限らないからだ。

    「今夜、川を渡りなさい。
     さもないと危害が及ぶかもしれません」

女がザドクの元を離れた。召使だ。
エンロゲルに待機中のヨナタンとアヒマアズに告げるために。
しかし間の悪いことにアブサロムの家来に見つけられ、
その挙動の不信さもあって後を付けられた。

女がヨナタンとアヒマアズの隠れ家に入ったとき、
二人はその者に気がついた。
二人は顔を見合わせて、
それからゆっくりと家を出て歩き出した。。
何とか相手をまかなければ・・

しばらく行くと知り合いの女の家に来たので
二人は目配せし、サッとその家の井戸に隠れた。
女も心得たもので、すぐ井戸に蓋をし、布を広げると、
あたかも麦を干しているかのように
無造作に麦をばら撒いた。

    「若い男二人を探しているのだが、
     この辺で見失った。
     彼らのことを知らないかな?」

男はあたりをきょろきょろと世話しなく見渡しながら
女に訪ねた。

    「あら、あのお二人さんですか?
     なにやら急いで、ほら、あそこ、
     あの川を渡っていきましたよ」

女は目の前の小さな川を指差した。

こうして女の機転で
ヨナタンとアヒマアズは大事な勤めを果たす事ができ、
ダビデ一行はその日の夜のうちに、ヨルダン川を渡り終えた。

アブサロムが、にわか仕立ての軍隊を率いて、ヨルダン川を渡ったのは
それからずっと後だった。
軍隊長はヨアブのまた従兄弟のアマサ。
アブサロムはギレアデに陣を敷いた。

ダビデがマハナイムに着くと、
そこの豪族三人が沢山の贈り物を携えて出迎えた。
その中の一人は
ヨナタンの子メピボセテを庇護した豪族のマキルでした。

こうしてダビデは彼らの助けを借りて一息つくと
自軍を三つにわけ、
ヨアブと、
アビシャイと、
ガテ人イッタイにまかせた。

当然ダビデも一緒に行くつもりでしたが、
みんなの強い反対にあいました。
相手の狙いは「ダビデの命」と分かっていたからです。
それでダビデは門の前で兵士たちを見送ることにし、
三人の隊長に言いました。

   「アブサロムを殺すな」
そのことは兵隊たちも聞こえました。

さあ、戦です。
場所はエフライムの森。

寄せ集めのアブサロム軍は
慣れない森での戦で
その日のうちに2万人以上が倒れました。

これはアブサロムにも想定外。
あわてて退却しているところを
ヨアブの兵士に見つかってしまいました。
ラバに乗った彼は(*1)急いで森の奥へ逃げようと
その尻を思いっきり叩きました。
ラバは驚きあわてて闇雲に突っ走ったので
アブサロムは低くたれていた大木の枝を避けきれず
自慢の髪を引かけたまま
ラバは走り去り、何と彼は宙ぶらりん。

追ってきた兵隊は王子に手をかけるのをためらい、
ヨアブに知らせに走りました。

    「馬鹿な! お前がそこで彼を殺せば
     銀10シケルと帯一筋をあたえたのに」

ヨアブはいまいましげに言いました。

    「たとえ銀千シケルを受けてもだめです。
     王様も殺せとは言われませんでした。
     たとへ隠れてやってもわかってしまったら
     あなたは私を庇ってはくれないでしょう」

ヨアブは兵士を無視して
三筋の投げやりをとると駆け出しました。

アブサロムはまだ生きていて、
ヨアブを見つけると、
木から下ろしてくれるようにと体を動かしました。

   王子とゆうだけで、ちやほやされ、
   なにかと召使か何かのように顎で指図し、
   自分の手を煩わしたアブサロム。

   わしは、軍の大将だぞ。
   たとえ王子とはいえ、
   お前のようなひよっこにそんな権利はないはずだ。
   いつかまた、ことを起こすと思っていたが、
   自分の父親を裏切るとは・・情けないではないか。

ヨアブはアブサロムの嘆願の声には耳も貸さず
無表情のまま王子アブサロムの心臓目がけて矢を投げつけました。

ヨアブの側近10人の若者も
頭上のアブサロムを取り巻いて撃ち殺しました。

ヨアブは腰に下げたラッパを鳴らした。

それはもう敵を追う必要はないという印であり、
アブサロムが見つかったという合図でもありました。

ヨアブは本隊に戻る途中の森の中で
大きな穴を見つけると
無造作にアブサロムの遺体を投げ込み
大小さまざまな石を積み上げて石塚を作りました。
これは叛乱者に対するやり方で
はなはだ乱暴な扱いでした。

  「将軍、この吉報を王様に継げる役を私にお任せください。
   私は俊足です」

祭司の子アヒマアズはしゃしゃりでた。

  「この知らせは王様にとってよい知らせとはいえまい。
   お前にはふさわしくない」

そう言ってヨアブは、そばに控えていたクシ人*2に伝令を託した。
彼はすぐ走り去った。
その後姿を見送りながら
「私は近道を知っていますから」
熱心にアヒマアズはヨアブに迫った。

ヨアブも彼の執拗さに負けてそれを許すと
彼は先に行った男よりも早く、ダビデの元に着きました。
彼は得意になって言いました。

   「神様が王様を祝福されました。
    反逆者は一網打尽です」

   「アブシャロムはどうした」
ダビデは身を乗り出して言った。
アヒマアズはアッと胸のうちで叫んだ。
これだ、ヨアブが私を引き止めたのは。
彼は一瞬息をつめたが、顔色一つ変えずに言った。

   「私が来るとき、外で大きな声を聞きましたが
    何なのかわかりませんでした」

ダビデは静かに眼を閉じた。
まだ、大丈夫だ。息子は捕まってはいない。
もし捕まってわしの前に現れたとしても、
若気の至りだ。赦そう。
あいつも反省するだろう。
彼の統率力をもってすれば、この国も安泰だ。
すでにわしは64歳だ。
そうだ、そろそろ息子に代を譲る時期にきている。
ダビデは胸の中で色々と思い巡らしていた。
そんなダビデの思いを打ち破って次の使者が来た。

   「アブサロムはどうした」
ダビデは使者の顔を見るとせかすように叫んだ。
彼は目を上げて誇らしげに言った。

   「あの方は、大将自らが手を下されました。
    これで王様のお命を狙うものはおりません」
   「なんと、ヨアブがか・・」

ダビデはガタリとイスを倒した。
涙が彼の頬を走った。
ダビデは急いで門の屋上に上がった。
自分ひとりになると
「お前の変わりに私が死ねばよかった」
と言って声をあげて泣いた。

ヨアブたちが王の元に引き上げてきても
ダビデは彼らに会うこともせず
王子の死を嘆いていた。
集まった兵士たちも、勝利の喜びを口にすることもできず
重苦しい空気が全体を包んだ。

ヨアブは上を見上げながら「チッ」トと舌打ちすると
王の部屋の戸を叩いた。

   「王様、戦から帰った兵士を労ってください。
    彼らは今、敗戦兵士のようにうなだれています。
    あなたは私たちが全滅し
    王子様が生き残ればよかったと思っておられるのですね。
    よろしいのですか、
    人心は今夜中にもあなたから離れてゆきますよ。
    そんな最悪なシナリオは破いてください」

ヨアブの言葉にむっとしながらもダビデは立ち上がった。
父親としてではなく、
王としてすべきことに思い至ったからである。

しかしダビデはヨアブを赦す事ができなかった。






*1:当時のイスラエルに馬はなかった

*2:エジプト人